プラグ一体型モバイルバッテリー「Anker PowerCore Fusion 10000」レビュー

デジタルガジェット

電源プラグ一体型モバイルバッテリー「Anker PowerCore Fusion 10000」を2022年1月に購入し、3ヶ月ほど使ってきたので感想を書き残しておきます。

「コンセントにそのまま刺せる」人気シリーズの大容量版

私はあまり日常的にモバイルバッテリーに頼ることはない人なのですが、ACアダプターとモバイルバッテリーの機能を兼ねて旅行時の荷物を減らせるアイテムとして、電源プラグ一体型の「Anker PowerCore Fusion」シリーズをずっと愛用しています。ただ、これまでのPowerCore Fusionシリーズは容量が少なかったので、長時間行動する場合のために10,000mAhクラスのモバイルバッテリーも別途用意していました。

これまでは初代PowerCore Fusion 5000のレッドモデル(2018年1月発売の追加色)、2代目のPowerCore III Fusion 5000(2020年7月発売)と使ってきて、なんとなくそろそろ買い替えかなというところ。実は待望の10,000mAhモデル(今回購入したPowerCore Fusion 10000)が2021年1月に発売されていたのですが買い替えサイクル的にスルーしてしまっており、遅ればせながら購入しました。これで「ACアダプタ兼用で済ませたいとき用」と「10,000mAhぐらいは必要なとき用」のモバイルバッテリーを分けなくても1台で済むようになりました。

“待望の”というのも、PowerCore Fusionはプラグ一体型の利便性に惚れ込むユーザーが多い一方、「これでもう少し大容量なら完璧なのにね」という意見は初期からありました。その割になぜかなかなか実現しなかったのです。

2018年秋にはAnkerの新製品一斉発表イベント「Power Conference」でPowerCore Fusion 10000が初披露され、翌年の2019年初頭に発売予定とされていましたが、後に何らかの事情で日本での発売を断念。当時は結局中国のみで発売されました。

また、「PowerCore Fusion 10000」をベースに、30WのUSB PDでMacBookを充電できるようにした「PowerCore Fusion PD」という改良型もありました。こちらは日本でも発売されたものの、12,000円近くする上にApple Store限定なので信者様のお布施用プライス割高な定価でしか買えないという、あって無いような製品でした。

PowerCore Fusion 10000の良い点・悪い点

そんなわけで、Appleにお布施をした人や中国まで買いに行った変な人を除けば、ほとんどのPowerCore Fusionシリーズ愛用者にとっては「やっと10,000mAhになった」という思いで迎えた製品。実際に使ってみると微妙だなと思う部分も多かったので、順番に見て行きましょうか。

Good:コンセントにそのまま刺せる

当然ながらこれまでのPowerCore Fusionシリーズと同様に、折りたたみ式の電源プラグが内蔵されており、充電器を別に持ち歩かなくてもモバイルバッテリー自体の充電ができます。

荷物を減らしたい旅行や出張のベストパートナーですし、そうでなくとも、普通にモバイルバッテリーを持っているつもりでたまたま入ったカフェに電源があれば、電源をお借りして節約モードに切り替えられるのです。あって損はない機能ですよね。

Good:10,000mAhに増えた

名前の通り、バッテリー容量は10,000mAh……じゃなくて9,700mAhです。mAh表記じゃ「容量」は示せてないだろという本質オタク向けに書いておくと35.21Whです。どちらにせよ、従来のPowerCore Fusionシリーズと比べて倍増し、サブではなくメインで使えるモバイルバッテリーになりました。

良い点は以上です。当たり前のことしか書いていませんね。そう、それ以外は微妙なんですよ。

Bad:デカい、重い

何を隠そう、この2021年1月発売のPowerCore Fusion 10000は、2019年に発売を断念した同名製品そのものです。あらゆる欠点は結局、古い設計の製品だということに帰結します。

まず、なんといってもデカすぎ・重すぎ。大きさは約82×82×35mm、重さは約278g。2021年発売の製品、それもモバイルバッテリー界のトップランナーであるAnkerの製品にしてはあまりにも時代遅れと言わざるを得ません。

たとえば「PowerCore 10000」なんて同容量でたった約180gなので、USB充電器「PowerPort III Nano 20W」とセットで持ってもPowerCore Fusion 10000よりも軽く済みます。発売を断念してからの2,3年で周りの製品が進化しすぎて、今更選ぶには存在意義が疑われる製品になってしまっています。

Bad:なぜ20W出力止まりなのか

これも「設計が古いから」の一言で片付く話なのですが、USB PDの最大出力の低さも魅力を損ねています。2019年に日本投入を断念して中国限定で発売した時点では15W出力だったので、現状の20W出力というのは一応改良されていることが確認できるものの、今時の10,000mAhクラスのモバイルバッテリーにしてはショボすぎるでしょう。

せっかく大容量になってもこれでは大半のUSB PD対応ノートPCは充電できませんし、カメラもメーカーによっては充電できない機種があります。PowerCore Fusionが好まれている最大の理由である「オールインワン」を最新の形でやるには、出力は絶対にケチってはいけないところです。こんなものを2年越しの発売にこぎつけるぐらいなら、30W出力のApple専売モデルをベースにした一般向けモデルを作れなかったのだろうかと疑問に思います。

Bad:見えないLEDインジケーター

電源ボタンの周りに8個のLEDが埋め込まれていてバッテリー残量を確認できるのですが、このLEDインジケーターは非常に見えにくいです。やや奥まった位置に配置されているのか、ほぼ真正面からしか見えません。最近のPowerCoreシリーズはどれもこういうデザインのボタンなので、もしかしたらPowerCore Fusion 10000に限った話ではないのかも……。

Bad:付属ケーブルもショボい

これは個人的にはそこまで重視していませんが、付属のケーブルがC―CではなくA―Cなのも嬉しくはありません。これでは5V 2.4Aでしか出せず、Type-C経由の20W出力を使うには別売のケーブルが必要です。

C―Cでまともな出力に対応できるようなケーブルは高いので付けられないということだと理解はしていますが、それならこんな半端なケーブルは付けずに完全に「別売です」で良いんじゃないでしょうか。モバイルバッテリー自体の充電はケーブル不要なのですし。

まとめ:実質3年前の製品、過度の期待は禁物

結論としては「どうしてもPowerCore Fusionがいい人」以外にはまったくおすすめできない製品です。「Fusionが10,000mAhになったらいいな」という長年の要望だけは果たされていますが、それ以外は古く低レベル。これでは最新の10,000mAhクラスのモバイルバッテリーと最新の20W出力の小型USB充電器を別々に持った方がマシです。

次があるならどうかこれ以上オンリーワンの個性にあぐらをかかず(実はもうオンリーワンでも無くなってるんですけどね)、最新のモバイルバッテリーと充電器両方の小型化技術を注ぎ込んだ2022年にふさわしい究極のPowerCore Fusionを作って欲しいと切に願います。

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