「NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VR」レビュー:オールラウンドに使える実用レンズ

カメラ

クラシックデザインで単焦点レンズが似合うZ fcですが、私は実用機材としても扱っているのでほとんどの日はズームレンズを着け、オフの日だけ単焦点に交換しておしゃれなお散歩カメラにチェンジするような運用をしています。今回はそんな実用枠で使っているレンズ、「NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VR」を取り上げます。

APS-C用のZマウント高倍率ズームレンズ

そもそもこのレンズ、ラインナップ的にはあまり目立たないというか、大きく取り上げられることは少ないマイナーレンズかと思います。そもそもZマウントのDXフォーマット(APS-C)のボディ自体がまだZ 50とZ fcの2機種しかなく、さらに大半のZ fcユーザーはコンセプト的にパンケーキズーム(16-50mm)以外のズームレンズを合わせないわけで……今は影が薄くても当然ですね。

希望小売価格は85,690円。実売価格では安い店なら8万円を切るぐらいです。他マウントの同クラスのレンズと比べると高めかなという気はしますが、マウントも生産年数も異なる物同士で比べてもあまり意味がないですし、現状唯一の選択肢としては許容範囲かと。

18mm~140mm(換算27mm~210mm)をカバーするAPS-C専用の高倍率ズームレンズで、いわばフルサイズ用のZ 24-200mm f/4-6.3の弟分のようなもの。望遠端で5段分の手ぶれ補正、防滴防塵など、実用性の高い仕様です。

Z 50ダブルズームキットのようなZ DX 16-50mm+50-250mmの組み合わせにはカバーできる焦点距離で負けるものの、約315gと軽く、システム重量はぐっと抑えられます。

マウント面を基準として、レンズ先端までの長さは沈胴時で約90mmとコンパクト。ただし、そもそもマウント径が大きいZマウントのレンズなので、小型なZ fcに着けるとそれなりに存在感はあります。

最大までズームすると5cmぐらい伸びるかな?多段伸縮も珍しくない便利ズームにしては最大時でもコンパクトにまとめられている部類でしょう。

ちなみにフードは別売りで3,000円ぐらいします。高倍率ズームのフードってどうしても浅くなるので遮光性は期待できませんし、衝突保護のためのバンパーぐらいにしかなりませんから、別にいいやって人は全然買わなくてもいいと思います。

「NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VR」の作例

ここからは、実際に18-140mmで撮った写真をお見せしながら写りを評価していきます。作例はすべてFlickrにアップロードして埋め込んであるので、拡大して見たい方はリンク先も合わせてご覧ください。

20220223-124350-0
20220212-153853-0

20220223-175146-0

まず第一印象としては、さすがはZマウントというべきか、便利ズームでもレベルの高い写りです。現代的な気持ちの良い描写で、言われなければこの手のレンズで撮ったものとは思わないでしょう。

望遠時に眠い描写になるということもなくクリアでシャープな写りですし、周辺減光も広角寄りの開放時に多少見えるかな?という程度でさほど気にならず。

こういうレンズは大抵どこかの焦点域の描写が犠牲になるものですが、「この焦点距離では絞らないと使い物にならん」みたいなことが不思議とありません。設定できる範囲のあらゆる焦点距離・絞り値を、性能上の制約を受けることなく撮り手の都合だけで自由に選択でき、真の意味での便利ズームと言いたくなる完成度です。

20220409-154344-0

20220223-121225-0

ボケもそこそこ自然で滑らかなので表現として普通に使えます。さすがに玉ボケは、非球面レンズを使った高倍率ズームの宿命として年輪がそこそこ目立ちますが、まあそういうのを求めるレンズではないので……。

逆光耐性もそこそこありますね。繰り返しになりますが、光学性能的には別売りの申し訳程度のレンズフードはあってもなくても良いので、ぶつけるのが不安とか見た目的にやっぱりフードがないと落ち着かないとかでなければ無理に買う必要はないと思います。

20220223-205828-0

Z fcとの組み合わせでは手ぶれ補正が5段分も効いているというのはあまり実感できていませんが、そもそもZ fc自体が安定してホールドできるようなカメラではないので、望遠でなんとか撮れている時点で間違いなくレンズの手ぶれ補正の恩恵を受けているはず。

DXフォーマットのZマウントボディがボディ内手ぶれ補正非搭載の機種しかない現状では、レンズ側に5段分の手ぶれ補正があるからといってめちゃめちゃ安定して撮れるということはなく、ちゃんと構えればちゃんと撮れるレベル。今後もし上位ボディが出てくれば、より戦闘力の高いレンズになるでしょう。

20220123-161530-0

そして、一番言いたかったのはこれ。このレンズ、高倍率ズームのくせにめちゃくちゃ寄れるんですよ。この点に関してはフルサイズ用のZ 24-200mmを超えています。

最短撮影距離は広角端で0.2m、望遠端で0.4mです。高倍率ズームは寄れないという常識を壊し、しかも広角端でだけ寄れるというようなカタログスペックの落とし穴ではなく(広角で寄ったら歪むし分かってる人は当然やらない)、望遠端や中間域でもしっかり寄れて物撮りだって出来ちゃうというのはなかなか革命的です。

総評:本当に便利な「便利ズーム」

私はこれまで便利ズーム、高倍率ズームというジャンルのレンズは避けてきましたし、失礼な言い方をすれば経験の浅い人が選ぶ中途半端なレンズだと思ってきました。「標準ズームと望遠ズームを買わなくてもこれ一本でいいじゃん」なんてのは机上の空論で、写りも悪く寄れず二本分の働きどころか片方の上位互換にすらならない、そんなにレンズ交換をしたくないならコンデジ買ってろ……そんな鼻で笑ってしまうような情弱商品という認識です。

ところが最新のZマウントで設計されたこのレンズは、文字通りの「なんでも一本でこなせる便利なレンズ」をとんでもないことに実現してしまっているのです。(望遠側の倍率はちょっと足りませんが)標準ズームと望遠ズームを別々に持った場合の写りに負けず、ワークディスタンスの問題もありません。便利ズームは当然何かを犠牲にした妥協の産物と思っている人にこそ、一度触ってもらいたいレンズです。

TOP