色々と珍しい車が多数配備されている、カーシェアの「カレコ」。これまでロードスターやS660などを借りてきましたが、今回はマツダ3を借りてみました。
とは言っても、マツダ3ならそんなに珍しくないのでは?と思われるでしょう。たしかに、最大手のタイムズカー(旧:タイムズカーシェア)でも普通に乗れる車です。
でも、一般的なカーシェアやレンタカーで使われているのは「15C」というカタログ非掲載の法人向けドケチグレードなんですよ。ところが、カレコはやっぱりひと味違います。15Cでもなければエントリーグレードの15Sでもなく、もうひとつ上の「15S Touring」を入れているんです。
ちなみに料金クラスは一番安い「ベーシック」なので、夜間パックなら4,000円もあれば十分遊べます。
マツダ車を所有したことはありませんが、免許を取った時の教習車は魂動デザインになる前のアクセラでした。日本名がマツダ3になった現行型も、日本初公開の場となった東京オートサロン2019に仕事で見に行ったりと何かと縁があります(上の写真はオートサロンで撮ったもの)。
そんなこともあって注目の最新モデルだった頃のイメージが強いせいか、はじめて見てから3年半近く経っているとはちょっと信じがたいですね。もちろん、今見ても新鮮なスタイリングだからというのもあります。
なじみのある車でありながら運転したことはなかったので、ちょっとワクワクしながら乗り込みます。
ダッシュボードやセンターコンソールが単調ではない立体感のある作りで格好良く、レイヤーの間から立ち上がるマツダコネクトもデザインの一部として溶け込んでいます。ソフトパッドが多用されていて質感も良いですし、内装は(外装も)200万円台前半からの車には見えないですね。
この横長の新世代マツコネ、見た目は良いんですが、元々使いにくいのに輪をかけて使いにくいですね……。
タッチ操作を排除して完全にダイヤル操作に絞られたおかげで、目的地設定の文字入力などはかなり面倒です。それなら、と音声操作でやろうとしてみたら、それはそれでコマンドの自由度が低くてあらかじめフローを理解していないとまともに使えません(それって音声操作のUXとしてダメダメでは?)。
ダイヤル操作にも良いところはあって、タッチ主体の一般的なカーナビよりは車が動いている間の操作に寛容な様子。画面を注視せずに操作できる分、安全性は高いでしょうからね。「慣れれば便利」な気配を感じる場面はありました。
今回は新宿地下のステーションで借り、川越で写真撮影→多摩湖・狭山湖周辺のちょっとしたワインディングロードで試乗→都内に戻って豊洲・有明周辺をドライブという流れにしました。
やっぱりこの車ははっきりしたキャラクターラインを排して三次元的なうねりで表現しているのがデザインの肝。景色の映り込みによる陰影が現れにくい色だと途端に安っぽく味気ないデザインに見えてしまうので、レンタカーシルバーではなくちゃんとしたグレーを買ってくれたカレコさんには拍手を送りたいですね。
正直、この車格でNAの1.5Lなんてトロいんだろうなぁ……と思っていましたが、なかなかどうして悪くありません。意識すれば低回転でゆったり余裕を持って流すこともできますし、踏み込んでみれば高回転まで軽快に吹け上がるNAらしいフィーリングとサウンドも楽しめます。車重の割に非力なのは事実ですが、さほど苦しさはありません。
今のマツダは悪い言い方をすれば「なんちゃって高級車」路線の売り方・購買層になっていることを思うと、乗ってみてちょっと予想外なキャラクターだったというか、ミスマッチな感じもする乗り味でした。けっこう硬めというか、突き上げ感が強いんですよね。乗り心地は決して良くはなく、俊敏さを感じさせる動きです。スポーティーハッチバックというつもりで向き合うと楽しい車で、個人的には好きですけど。
あと最後にこれだけは言っておきたいのですが……見た目全振りで後方視界がヤバいです。リアウィンドウ寝かせすぎ&リアドアの窓小さすぎ&Cピラー太すぎ(柱というより壁)で全然見えません。バックモニターがあるので左に振り返って真後ろが見えないのはまだ良いとしても、右に振り返っても予想以上に見えないので合流時などは困りますね。
ハンドリングやドライビングポジション、予想外に良かったSKYACTIV G 1.5のエンジン特性など良いところもたくさんあるのですが、どうもやりたいこと・見せたいことが優先されすぎて各要素の出来にムラがあるというか、アンバランスな印象を受けました。カレコに導入されたのは2021年7月からのようなので、最初の年次改良が入る前の初期型というわけでもないと思うんですけどね(車検証を見ておけば良かった)。