世界初のフォルダブルディスプレイ搭載PC「ThinkPad X1 Fold」を使ってみた

デジモノ

数年前から、高級スマートフォンの付加価値として定着し始めた「フォルダブルディスプレイ」。画面が曲がるというこれまでの常識では考えられない体験は視覚的に面白いだけでなく、従来の板状の端末とは違った利便性も生み出しています。

そんなフォルダブルディスプレイを、スマートフォンではなくPCに世界で初めて搭載した製品が「ThinkPad X1 Fold」です。発売から1年半ほど経った今でこそ多少は手を出しやすい値段になってきましたが、当時は40万円前後という高嶺の花。そんな特別なマシンを今回、レノボ・ジャパン様のご厚意でお借りして試用させていただきました。

ThinkPad X1 Foldの外観・付属品

ThinkPad X1 Foldは、13.3インチのフォルダブル有機ELディスプレイを搭載するタブレット型のWindows PCです。日本では2021年10月に発売されました。専用設計のワイヤレスキーボードとスタイラスペンが用意され、上の写真のように一式まとめてコンパクトに持ち運べるようになっています。

フルセットで畳んだ際の厚みは3cmを超え、総重量も1.2kg近くあるので、コンパクトな割にはずしりと重みを感じます。しかし通常の13インチ級のノートPCと比べればフットプリントは当然小さく、A5サイズの本格的なシステム手帳程度のサイズ感。PC用ではないバッグにも無理なく収まります。

フォルダブルディスプレイを搭載する製品の弱点のひとつに、紙のように折り目を付けてぴったり閉じることはできない(画面の最小曲率に限界がある)ため、折りたたんだ際にすき間ができてしまうという問題があります。これは見栄えの問題だけでなく、携帯時に外部から力が加わった際の耐久性を考えてもよろしくありません。

2022年現在の話をすれば、一部のスマートフォンメーカーはヒンジの構造を工夫して沈み込ませるなどの方法ですき間なく閉じられるフォルダブルディスプレイ搭載機を実用化しています。ThinkPad X1 Foldはまだフォルダブルディスプレイが出始めて間もない時期に登場した製品なので例のすき間は当然ありますが、そこをただのデッドスペースにはしていないのがスマート。なんと、「折りたたみ時のすき間にぴったり合う極薄キーボード」を専用オプションとして開発してしまったのです。

折りたたみ時と同じサイズ=画面サイズの半分程度ということで、専用キーボードはややクセのある配列。先述の極薄設計のために充電端子は本体と同じUSB Type-Cではなくコネクタの薄いmicro USBになっていたり、ThinkPadなのにトラックポイントすら無かったりとお世辞にも使いやすいキーボードではありませんが、セットで持ち歩くことを考えるとほぼ荷物を増やさずに出先で物理キーボードを使える点は魅力。

UMPCのようなものだと思えば操作性は慣れの範疇でしょう。キー配列はともかく、タッチパッドは極小サイズなのに反応が良く、見かけ以上に実用的でした。キーボードの左側にはペンホルダーがあり、付属のスタイラスペンもまとめて持ち歩けます。ペンは4096段階の筆圧検知に対応しており、Galaxy Z Fold3よりも前の発売であることを考えると、実はフォルダブルディスプレイ+ペン操作をいち早く実現した製品でもあります。

ディスプレイはご覧の通り、曲がった状態でも表示可能。発展途上で構造的に弱い部分もあるフォルダブルディスプレイを採用しながら、高い耐久性を要求されるThinkPadブランドの一員に加わっているだけあって、極太のベゼルと何重にも保護パーツを仕込んだヒンジに守られる構造となっています。

フォルダブルなので仕方ないのかな?とも思いますが、かなり光沢が強く映り込みの激しいグレアディスプレイなのはThinkとしてはどうかな、と思うところ。

ちなみに、折り曲げ部を除く平面部に関しては、この手のディスプレイにありがちなグニャっと沈み込むような柔らかさは感じず、通常のディスプレイと遜色ない程度に硬い印象。これならスタイラスペンに対応できたのも納得です。

分厚いボディや頑丈で飾り気のないベゼルなどからはどことなく試作機感も漂いますが、外側を見るとさすがは発売当時40万円の高級機だと感じました。外側はレザーで覆われ、開閉に合わせて滑らかにスライドします。

この本体に組み込まれたレザーカバー(取り外し不可)には、キックスタンドも内蔵されています。スタンドを開くとThinkPadの差し色としては定番の赤の裏地が見えてカッコいいですね。

ThinkPad X1 Foldを2週間使ってみて

今回、2週間ほど外出先での作業マシンとしてThinkPad X1 Foldを使ってみました。ぶっちゃけ中身は普通のWindows PCなので、スマートフォンのフォルダブル以上に「フォルダブルだからできる」というようなキラー機能には欠けています。しかし、1台のPCを2つのサイズで使えるというのはこれまでにない体験で、進化の可能性を感じました。

上の写真は、X1 Foldを90度開いて片側にキーボードを乗せた状態です。携帯時は基本的に画面にキーボードを挟んだ状態ですから、キーボードを外さずにそのまま開いた状態とも言えます。キーボードはマグネットで固定されており、この状態を認識すると画面の表示領域は自動的に残りの半分だけになります。つまり、13.3型の大型タブレットとしてだけではなく、半分のサイズでUMPCのようにも使えるんですね。

完全に開くとかなり広い作業スペースを得られます。13.3インチといっても縦横比が4:3なので、一般的な16:9や16:10の13インチとはだいぶ感覚が違い、文章を読み書きする用途では15インチクラスに近い余裕がありました。カフェなどで十分に場所を取れるときはこのように開き、急ぎの連絡など手短に済ませる時は先述のUMPCスタイルで……というように、臨機応変に使えるマシンです。

まとめ

ThinkPad X1 Foldは技術的な目新しさだけでなく、利用スタイルの面でも新しい可能性が広がるPCです。

惜しむらくは、Core i5-L16G7(Lakefield)という高性能コア/省電力コア/メモリをワンパッケージに積層実装した特殊なSoCを採用した関係で処理性能があまり高くなく、メモリ容量も8GBに制限されてしまっていること。このため、マルチに使える斬新な作りだけれど性能的にはマルチに使えるどころか使いどころが限られるという、コンセプトに現実が追い付いていない感が否めません。

これに40万円も出すのはよほどお金に余裕があるか絶妙な用途を持っている人でないと無理だったんじゃないかな……と思うものの、20万円程度に落ち着いた今なら、サブ機としてトライしてみるのもありかもしれません。コンセプト自体は光るものを感じるので、並のモバイルノート程度に使えるスペックを得てもう少しだけスリムになった第2世代が出ることを期待したいですね。

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