5月10日、AppleがThe music lives on(音楽は生き続ける)という題名のポエムをニュースルームで公開しました。“音楽は”生き続けるって、代わりに何か死ぬのか?そう、これはiPodの死を知らせる文章でした。
最終機種となったiPod touch(第8世代)の販売を在庫限りで終了し、これをもって約20年続いた歴史に幕を閉じるとのこと。執筆時点ではまだ在庫があるようです……と言っても、発売から3年近く経つ製品であり、OSサポートの面でもそろそろ限界が見えそうなA10 Fusion搭載機なので、いまさら買い納めをする人はあまりいないでしょうけれど。
これだけスマートフォンが普及した今となっては、高音質路線ではない一般向けのDAPだったiPodというブランドがいつか消滅するのは当然のこと。iPod touchが今日まで残ってきたのはあくまで「安価なWi-Fi版iPhone」としての存在意義に支えられてきただけで、iPod本来の用途では、数年前にtouch以外の機種をすべて販売終了した時点で事実上撤退していたと言って良いでしょう。
iPodという偉大な製品の栄枯盛衰についてはちゃんとしたサイトで読んでいただくとして、ここでは“訃報”を聞いて思い浮かんだ雑感を書きなぐっておきます。
ちなみに記事中の写真はiPod touch(第6世代)で、2015年にα6000で撮影したもの。「昔のこいつ、写真ヘタクソだったんだな~」とご笑覧いただければ(あえてリサイズしかしていません)。本当は第4世代とか第5世代の方が思い入れがあるのですが、写真が残っていませんでした。第5世代の裏の丸いとこを押してひっかける平べったいヒモ(iPod touch loop)の話とかしたいよ~~~。
この写真の第6世代の頃にはもう当時タダ同然で買い漁った最新スマホが机にバカスカ積み上がっていたので、ノリで発売日に買ったけど使わなすぎて即売った気がします。それにしてもカッコいいパッケージですね、環境バカがデカい面しすぎな今の時代では絶対に出せないでしょう。
終了のお知らせを知ってまず思ったことは「そりゃそうだよな」。冒頭でも書いた通り、すでにiPodブランドは数年前から緩やかな死を迎えており、いつかこうなる日が来ることは分かりきっていました。
その上で、ノスタルジーに浸る以外のまともなコメントをするとすれば、「意外と困るところもありそうだけどどうなるんだろう?」。個人利用では「もうみんなiPhoneを持っているからいらない」と思われているiPod touchも、実は業務端末としてはけっこう活躍しています。
実際に見たことがある例では、ファミレスのオーダー端末や病院の看護師用端末など、Wi-Fi環境下での屋内運用かつiPadほど大きな端末を持たせられない場面では低コストな選択肢として重宝されている模様。これからはiPhone SEや型落ちの中古iPhoneが空席を埋めるのでしょうかね?
まあ、Appleはそんな現実的で泥臭い需要に向き合って物を作るような会社ではありませんし、やっぱり気まぐれな巨大企業が独占提供しているプラットフォームの不確定な端末ラインナップに依存して業務システムを組んでしまうのってリスクが大きいな……とか思いました。
実を言うと私、音楽プレイヤーとしてのiPodにはそこまで思い入れはないんですよね。買ったことがあるのはiPod nano(第5世代)とiPod shuffle(第3世代)ぐらい。四六時中持ち歩いて音楽を聴くような習慣もなければ、それほど熱心に追いかけているアーティストもいませんでしたし。単純にハードのデザインに惚れて買っただけです。
むしろお世話になったのは、音楽プレイヤーではなくWi-Fi版iPhoneとしてのiPod touchでした。2010年頃の話かな。今の人は想像もつかないだろうけど……当時は別にガジェットオタクじゃなくても、ガラケー+iPod touchの2台持ち、あるいはそこにイー・モバイルのPocket WiFiなんかを加えた3台持ちってそこそこポピュラーな持ち方でしたからね。
一番思い出深い機種は、2010年発売のiPod touch(第4世代)。散々使い倒したというか弄り倒しましたし、ほぼ発売直後に買ったので周りの友達は分厚い第3世代を使っているなか、自分だけ薄くてカッコいい最新デバイスを使っている優越感もちょっとありました。まあ、初代iPad(セルラーモデル)も持っていたので、今となっては「オレは初代からiPad使ってるから」の方が自慢になりそうですが。
同年に買ったauのIS01(Android 1.6)と合わせて、あの時iPod touchを買ったことは私の人生には(良くも悪くも)そこそこ大きな影響を及ぼしたと思います。未完成なオタクのおもちゃでしかなかった2大モバイルプラットフォームが、全人類が当たり前に使う生活インフラになっていく過程をほぼ全編通してマニアックに観測し続けたこの12年間はかけがえのない時間でした。その原点の片割れだったiPod touchに哀悼の意を表して締めくくります。