「ちょっと興味はあるけど、どこにも売ってないんだよなぁ……」と思っていた品薄商品が入荷されているのをたまたま発見して、即ポチってしまいました。ニコンZマウントの単焦点レンズ「NIKKOR Z 40mm f/2」です。
「NIKKOR Z 40mm f/2」の外観と仕様をチェック
NIKKOR Z 40mm f/2は、2021年10月1日に発売されたフルサイズ対応の単焦点レンズ。全長約45.5mm、重さ約170gという小型・軽量な扱いやすいサイズ、そして実売3万円以下という手頃な価格から人気を博し、発売から半年以上経った2022年5月現在も品薄状態が続いています。私はマップカメラで新品を28,710円で購入しました。
鏡筒のデザインはほとんどのZマウントレンズに共通するものなので特筆すべき点はありません。非S-Lineの小型単焦点なのでもちろんプラマウント。これでも一応「防塵・防滴に配慮した設計」とされています。ちなみにレンズフードは付属せず、別売での用意もないようです。
価格帯やサイズからすると「NIKKOR Z 28mm f/2.8」と同列と思われ、ロードマップでも「薄型単焦点レンズ」の項目にまとめられています。でも、焦点距離違いの同等スペックではなくて少し明るいのがうれしいですね。
コンパクトなレンズでも巨大マウントに合わせて太めなのはもう、Zマウントレンズの宿命なので諦めましょう。
フィルター径は52mm。前玉の小ささとも鏡筒の太さとも合っていない半端なサイズにも思えますが、「NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3」や先述の28mmなど、併用するユーザーが多そうな価格帯のレンズ同士である程度揃えてくれているのかな?という気もします。
普段使いの実用レンズとして重宝している「NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VR」とのサイズ比較。比較対象の18-140mmも決して大きなレンズではないのですが、フルサイズ対応のF2単焦点でこの小ささは魅力です。
公式サイトの製品情報を見ると、4群6枚という現代の純正レンズとしては異常なほどシンプルな構成であることが分かり、そりゃコンパクトなわけだと納得。
「Z fc」につけて撮ってみる
DXフォーマットの「Z fc」に40mmをつけて撮ってみました。この40mmという焦点距離は絶妙で、そのままフルサイズで使ってもAPS-C機につけても、標準域近辺のレンズとして使いやすいのがいいですね。
以下、作例はすべてFlickrにアップロードして埋め込んであるので、拡大して見たい方はリンク先も合わせてご覧ください。
絞ればしっかりと解像し、Zマウントのレンズらしく隅々まで気持ち良く写ります。隅々まで……とは言いましたが、コンパクトすぎてつい忘れてしまうものの「フルサイズ対応のレンズをAPS-C機で使っている」状態ですから、イメージサークルの端を贅沢に余らせて中央部分だけを使っている以上は当たり前といえば当たり前。
でも、姉妹製品のようなポジションにあるNIKKOR Z 28mm f/2.8はAPS-C機で使っていても「これ本当にフルサイズで使えるの?」と思ってしまうぐらいには周辺部の甘さや減光が見られたので、40mmのほうが一段上の写りではあると思います。
APS-C機での換算60mmという画角は、純粋な標準レンズというよりは中望遠に片足突っ込んでいる感じ。被写体をちゃんと決めて、切り取る意識を持って撮るレンズになります。
F2と明るめのレンズですから、夜のスナップも存分に楽しめます。Z 50やZ fcとの組み合わせではボディ・レンズともに手ぶれ補正無しとなりますが、換算60mm程度ならちゃんとした構え方ができていればなんとかなるんじゃないかと。
最短撮影距離は29cm。十分寄れるレンズではありますが、APS-C機での運用では画角的に、座ったまま自然に構えて卓上の料理を撮るのは難しいです。手を上に伸ばしてモニターを見ながら撮ることになり、このときばかりは手ぶれ補正がないのがちょっと響いてきます。
通常撮影におけるボケも比較的なめらかでクセがなく使いやすいと思いますが、それ以上に整った玉ボケには驚きました。開放でも悪くありませんし、F2.8まで絞ると(2枚目)特に良い感じ。9枚絞りで円形に近い玉ボケが出やすいのも効いていますね。
繰り返し書いている通り、フルサイズ用のレンズなのでAPS-C機ではイメージサークルに余裕があることを割り引いて評価する必要はありますが、年輪や縁の色付きもあまりなく、周辺部でのレモン型の歪みも控えめ。安価なレンズとしては立派です。
総評:「撒き餌レンズ」と甘く見てはもったいない!
こんなことを言うのもアレですが、私、カメラもレンズもとっかえひっかえ相当な数使ってきていますし、いまさら撒き餌レンズなんか買って「わ~すご~い!めっちゃボケる!神レンズ!」とか騒ぐほどカメラ経験値低くはないんですよ。
ぶっちゃけ、Z 28mm/40mmが同時に発表された時点では「こんなの使うぐらいならZじゃなくていいわ、やっぱ最新マウントの恩恵を存分に発揮したF1.8シリーズ以上の高性能レンズじゃないと」と思っていました。でも、ある程度ユーザーに行き渡り始めて作例がたくさん出てきてから、28mmはともかく40mmはちょっと撒き餌レベルじゃ済まなさそうだな?と気付き、つい気になって買ってしまいました。
値段以上によく写るレンズができた理由はもちろん、外装やマウント部品、付属品など光学系以外のコストを徹底的に削っているということもありますが(そうは言ってもビルドクオリティ自体は十分高いです)、高性能レンズとは別の意味でZマウントの設計自由度の恩恵を受けているとも言えます。レンズの枚数を極端に減らして巨大な後玉でまとめるという、大径マウントでなければ不可能な設計で低コストかつ高画質なレンズ構成を実現しているわけです。
単焦点レンズを初めて買って感動している層からの評価(未満)ではなく、ある程度のカメラ歴があって色々知っている層から見ても「3万円でこんなに写るのか」と新鮮に驚けるレンズです。純粋な気持ちで撒き餌レンズに手を出すぐらいの段階でこんなよく出来たレンズを触ってしまったら、後が大変かもしれませんよ。