あなどれないエントリーレンズ「NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR」レビュー

カメラ

夏場は軽いカメラやレンズが欲しくなる持病があり、今年も発症してしまったので現在メインで使っているZ fc用にパンケーキレンズ的なものが欲しいけどZマウントにはまだないんだよね……という話をしばらく前に書きました。

その思考を書き連ねた前回の内容をまとめておくと、

・純正パンケーキ単焦点(26mm)はレンズロードマップには載っているけれど、まだ出そうにない(少なくともこの夏のうちには使えない)
・日本発売はまだだけど、つい最近出たLAOWA 10mm f/4 Cookieを輸入してみるのはアリかも
・灯台下暗しでNIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VRでも十分なのでは?

というようなことを書きました。パンケーキレンズで超広角という珍しいスペックのLAOWA 10mm f/4 Cookieも非常に気になるところですが、いち早く手に入れた海外勢のレビューを見る限り、さすがに割り切った設計で詰め込まれているので周辺減光がスゴく、トイレンズのつもりで肩の力を抜いて遊んであげる必要がありそう。今のところ、輸入してまではいいかな……という気持ちです。

ひとまず身近な選択肢から試しておこうよ、それで事足りて済むならそれに越したことはないじゃん?ということで、とりあえず新宿の防湿庫に行ってNIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VRを拾ってきました。

NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VRは、Z 50とZ fcとZ 30……つまり、今あるZマウントのDXフォーマット全機種のキットレンズとして採用されています。Zマウントで使う最初の一本になる人も多いであろう、正真正銘のエントリーレンズです。収納時の厚みは32mm、重さは約135gということで、さすがにパンケーキレンズとまで言い切るにはやや大きいものの、かなりコンパクト。プラマウントなのもあって軽いですし。

正直、他のマウントならこのクラスのレンズは中級者以上の目から見るとだいぶ厳しいものがあるので見向きもされないというか、進んで買うことはまずない存在でしょう。しかし、腐っても最新規格のZマウントレンズの一員ですから、こんなものでも案外あなどれない性能を持っているのが恐ろしいところです。

DXフォーマット(APS-C)専用の標準ズームレンズで、焦点距離は16-50mm。35mm判換算の画角でいえば、24-75mm相当になります。開放F値はさすがに通しではなく、広角端でF3.5、望遠端でF6.3。 レンズ構成は7群9枚(EDレンズ1枚、非球面レンズ4枚)で、スペック的には至って平凡なよくあるキットレンズという感じ。

撮影時には前玉を繰り出してから使う沈胴式となっており、ズーム操作は手動。エントリーレンズだからといって安易に電動にしないところはニコンらしいとも思いますが、Vlog用途に重きを置いたZ 30が登場した今となっては、電動にしておかなかったことが足枷になってしまったような気もします。

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お外に持ち出して試し撮りをした第一印象としては「すごい普通」。面白みのある写りはしませんが、クセのない写りで扱いやすく、エントリーレンズゆえの力不足をあからさまに感じる要素も少ないです。良くも悪くも至って普通。入門レンズとして基礎を身につけるにはとても良さそうです。

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私は普段、Z fcには「NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VR」というオールラウンドに使える万能レンズをつけっぱなしにしているのですが、広角端の2mm差はやはり大きいですねぇ。後ろに下がって撮るのが難しい観光スポットでも、撮影のために手間取ることなく目の前の景色をサクッとフレームに収められます。

付属・別売のどちらでもレンズフードは用意されていませんが、意地悪な構図で撮らなければまず困らないぐらいの逆光耐性はあります。歪曲収差や周辺減光はさほど気にならないというか、お決まりの「電子補正をオフにできない」(設定項目がグレーアウトする)仕様。このクラスならターゲット層はまず気にしないでしょうし、電子補正前提の設計で実利を取るのは正しい選択でしょう。

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あえて弱い部分を上げるとすれば、一眼初心者がきっと憧れているボケを使った描写はほぼ望めないので、レンズキットで1本目にこのレンズを手にしたら、早々に2本目を買い足す必要があるでしょう(28mm f/2.8か40mm f/2あたりかな)。

スペック的にボケ量を稼げる場面があまりないですし、画質設計もそれを織り込んで解像重視に振られている印象です。そのおかげで、写りのクリアさやシャープさはクラスを超えた優秀さになっていると思います。

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さすがにこの手のレンズにナイトスナップは荷が重いだろう……と思いきや、案外行けます。これはレンズの性能云々というよりは、APS-CセンサーでISO 6400でも破綻なく十分見られる画が出る現行ボディのポテンシャルの高さでしょうね。あ、書きそびれましたが記事中の作例は4枚ともJPEG撮って出し(ついでにノートリミング)です。

簡潔に評価するなら、NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VRは入門者も不自由なくカメラに慣れていけそうな優等生レンズです。

表現力や面白み、深みはありませんが(そういうのを望むレンズでもないですし)、ある程度カメラの知識がある人なら抱いているであろう“こういうレンズ”への先入観を乗り越えて使ってみると、今はエントリーレンズもレベルが上がっているんだなぁ……と実感。写真を撮る予定がない(メインの用事じゃない)お出かけにもとりあえずカメラを連れて行くための普段着レンズとして1本持っておくと意外と使えるかもしれません。

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