WiMAX +5Gルーター「Speed Wi-Fi 5G X11」レビュー:おすすめはできない出来

デジタルガジェット

先日、WiMAX +5Gのモバイルルーターを契約しました。契約時に選んだ端末は、最新モデルの「Speed Wi-Fi 5G X11」。

モバイルルーターはスマートフォンやタブレットほど選択肢が多いものでもないですし、機種ごとの機能の差もそれほどなく、基本的には「新しい機種の方が速い」ぐらいの違いしかありません。特にWiMAX +5Gの場合はどの機種を選んでも本体代金の負担が変わらない(発生しない)場合が多いので、よほどのことがなければ特に考えるまでもなく最新機種をもらう人が多いと思います。

そんなわけで私もあまり深く考えずに最新のX11を選んだのですが、これがまぁひどい出来で……。

「Speed Wi-Fi 5G X11」の概要

Speed Wi-Fi 5G X11(NAR01)は、2021年10月15日に発売されたNECプラットフォームズ製のモバイルWi-Fiルーターです。本記事の執筆時点ではWiMAX +5Gのモバイルルーターとしては最新機種となっており、本家のUQ WiMAX/auをはじめ、各プロバイダで主力モデルとして販売されています。

主な仕様としては、通信速度は下り最大2.7Gbps/上り最大183Mbps、Wi-FiはIEEE 802.11a/b/g/n/ac/ax(Wi-Fi 6)対応、バッテリー容量は4,000mAh、本体サイズは約136.0×68.0×14.8mm/約174g。カラーはチタニウムグレーとスノーホワイトの2色から選べます。

Wi-Fi 6やWPA3への対応、専用スマートフォンアプリからの休止やリモート起動、「Wウイングアンテナ」内蔵の専用クレードルによる宅内利用時の通信安定性などがアピールポイントです。

「Speed Wi-Fi 5G X11」の外観

ひとまず、諸々の評価をする前に外観を見ていきましょう。本体カラーはチタニウムグレーとスノーホワイトの2色があり、私が購入したのはチタニウムグレーです。

WiMAX系のモバイルルーターって他キャリアと比べて鮮やかな色使いやオシャレなデザインの機種が多いと思うのですが、その点ではX11はちょっと面白みに欠けますね。ハッキリ言ってしまえばダサい。

充電端子は、今時のモバイル機器としてはスタンダードで扱いに困らないUSB Type-C。タッチパネルは搭載しておらず、操作は物理ボタンまたはWebベースの管理画面と専用スマートフォンアプリで行います。

「モバイルルーターとホームルーターを1契約で差し替えながら運用したい」みたいな特殊なケースを除けば、WiMAXルーターのSIMカードを出し入れすることはあまり無いと思いますが、SIMピン不要で着脱できるのはGood。

本体のサイズや重量は「Galaxy 5G Mobile Wi-Fi」よりは抑えられていますが、WiMAX 2+時代の機種と比べると大きめ。

5G初期のモバイルルーターは消費電力の増大によるバッテリーの大型化やアンテナ配置に悩まされた結果、メーカーを問わず巨大な機種が増えてしまった印象がありました。ようやくこなれてきたかな?と思う一方で、従来機のサイズ感に慣れている人、たとえばポケットにスマートフォンとルーターをセットで放り込んでいたような人にはまだ違和感が残りそうなサイズです。

「Speed Wi-Fi 5G X11」の弱点・問題点

程度の差はあるにしてもどんな物にも長所と短所の両方があると思うので、陰陽どちらかの面だけに終始する記事はなるべく書かないようにしているつもりですが、正直これに関しては褒めるところが見つからないので、おすすめできない理由を列挙して終わろうと思います。

モバイルルーターに求めることってそんなに多くないと思うんですよ。快適に通信できてさえいればあまり存在を意識することもない空気のようなものじゃないですか。その数少ない評価点のほとんどがことごとくダメでした。

まず、一番厳しいのは電池持ち。この機種のカタログ上の連続通信時間は約490分(8時間ちょっと)で、実際に何度かフル充電からバッテリーが空になるまで使ってみた感触としてもウソではありません。

ただ、そのイメージにはだいぶギャップがあって、連続通信時間という言葉からついイメージしてしまう「絶えずパケットを流し続けて8時間持つ」とは解釈しない方が良いです。仕事中にスマートフォン2台をX11にぶら下げて放置しておき、実際に通信させた時間は1時間程度というほぼ待機のみの状態でもきっちり8時間で干からびました。

そもそもカタログスペックの時点でも燃費の悪さは垣間見えています。先に発売されたGalaxy 5G Mobile Wi-Fiはバッテリー容量5,000mAhで連続通信時間1,000分なのに、バッテリー的には1,000mAh少ないだけのX11の連続通信時間は半分以下ですからね(連続待受時間でも約半分)。

なんでこんなに燃費が悪いんだろう?と考えてみると、思い当たる節はあります。発熱もすごいのです。別に猛暑日の屋外などではなく、適温の室内でもバッグに入れっぱなしにしたらホッカイロですから。

最新の高速ルーターだからちょっとぐらい電池持ちが悪くて爆熱でも許してあげよう、と心の広い方なら思うかもしれません。たしかに電波状況の良いエリアなら速度だけは快適なのですが、総合的に見ると通信性能にも不満が残ります。

2022年8月現在の状況では、プラスエリアモード非使用時のWiMAX +5Gのモバイルルーターでコンスタントに5Gが入り続けるとは限りません。私の使用環境では自宅にしてもオフィスにしても「外では5Gだけど室内だと4Gに落ちたり落ちなかったり」という具合なのですが、このようなエリアの狭間での挙動があまりよろしくありません。

ハンドオーバー時のラグが大きく、ルーターにぶら下げているPCから見た時に「ネットワークに接続されていません」状態になってしまうことが多々あるぐらい、お世辞にもスムーズとは言えない挙動です。

それから、良くも悪くも「中身はほぼスマホ」と言われているGalaxy 5G Mobile Wi-Fiの次に出てきただけに、古臭い操作性も見劣りする点です。2.4インチの小さな画面と3つのボタンを使って操作するのですが、それ自体は一旦よしとしても、無駄な階層とカクカクしたかったるいアニメーションの付いたUIが操作のストレスを増しています。

電池持ちが悪くこまめに電源を切っておく必要があるため、電源ボタンを押してから通信可能な状態になるまでの待ち時間が短いのはせめてもの救い。5GHz帯対応機器のモバイルルーターなので起動時には干渉波などのスキャンが入るのですが、スキャン前に2.4GHz帯だけ先に開けてくれる仕様です。

このため、電源ボタンを押してから30秒ほどでひとまず通信できる状態になります。スキャンには1分ほどかかるので、5GHz帯も含めてフルに使えるようになるまでの所要時間は1分半ほどです。5GHz/2.4GHzを同一SSIDで飛ばす仕様なので、「5GHz帯のチェックが終わるまで2.4GHz帯で繋ぐ」ということ自体は特に手間はかかりません。

結論:Galaxy 5G Mobile Wi-Fiを買うか新型を待った方がいい

電池持ちが悪い、発熱がひどい、5G/4Gのハンドオーバーが下手、操作性が悪い……と、好条件下での通信速度がちょっと速い以外はいいとこなしの本機種。いまWiMAX +5Gのモバイルルーターを買うなら、発売時期や最高速度に惑わされず、Speed Wi-Fi 5G X11より半年古いGalaxy 5G Mobile Wi-Fiを選ぶことを強くオススメします。

あるいは、現状ではX11が最新機種とは言っても1年近く経っていますから、周期的に秋冬には新しいWiMAX +5Gルーターが出るだろうとも考えられますし、少し待ってみるというのもアリかもしれませんね。

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