【E-M1X】ハイレゾショットやデジタルテレコンを試してみる

カメラ

2019年2月に発売されたオリンパス(当時)のフラッグシップカメラ「OM-D E-M1X」。発売当初は40万円近い強気の価格設定で、値段もサイズもマイクロフォーサーズのカメラとしては規格外……お世辞にも多くのユーザーに受け入れられたとは言えず、今では中古なら状態の良い物でも10万円を切る程度で買えてしまうことも珍しくありません。

そんなちょっと残念なカメラを最近サブ機としてお迎えして遊んでみています。腐ってもハイアマ~プロユースを意識した上級機種ですから、色々と興味深い機能が盛り沢山。なかなか遊び甲斐のあるカメラです。詳細なレビュー記事は後日あらためて上げますが、今回は多彩な機能のなかから「ハイレゾショット」と「デジタルテレコン」を使ってみたお話です。

2,040万画素→5,000万画素、手持ちでも使える「ハイレゾショット」

ハイレゾショットとは何かというと、カメラの中でイメージセンサーだけを細かく動かせるボディ内手ぶれ補正の仕組みを利用し、ごくわずかにセンサーの位置をずらしながら連写した写真を後処理で重ね合わせることで擬似的にセンサー本来のスペックよりも高解像度の画像を得られる機能です。

ソニーの「ピクセルシフトマルチ撮影」など、メーカーによって名前は違いますが最近のミラーレス一眼にはこの手の機能が割とよく入っています。しかし、E-M1Xのすごいところは手持ち撮影でも使えるという点。こんな繊細な機能は普通なら三脚を使うのがセオリーですが、持ち前の強力な手ぶれ補正を活かし、オリンパスは手持ちでも実現してしまったのです。

ひとまず、通常モードと手持ちハイレゾショットで撮った写真を見比べてみましょう。以下、作例はすべてFlickrに元サイズでアップロードしたものを埋め込んでいるので、リンク先で拡大してご覧ください。どれがハイレゾショットかはファイル名などを参照してください。

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率直な感想を述べれば、めちゃくちゃ使い所が限定される機能だなと感じました。明確に恩恵を受けられるのは建築物の撮影ぐらいじゃないでしょうか。作例2組目の東京駅の写真で、レンガ造りの部分を拡大してみると違いがわかりやすいかと思います。

高解像度の画像を得たい場面といえば雄大な大自然の風景なんかが真っ先に挙げられそうですが、草木などは風に揺られるので逆効果になりやすいですし、性質上もちろん動体には使えません。一番効果があるといった建築物が主役の写真であっても、歩行者などが入る構図では不自然な形跡が残ってしまうため、本領を発揮できる場面は極めて限定的です。

画角内で動いているものがあった場合、長秒露光のようにきれいに軌跡が残るわけではなくAIが生成した画像みたいな不気味さが残り、これを表現に昇華するのもちょっと難しいかなと。

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ただ、使い所の難しさは手持ち撮影に限らないハイレゾショット全般の課題であり、三脚使用時とほぼ同等のパフォーマンスを手持ちでも発揮できているという点に関してはお見事です。三脚使用時は8枚、手持ち撮影時は16枚の画像から生成するというプロセスの違いがあるので厳密には処理時間などに差がありますが、成果物だけを見れば遜色ありません。

あえて手持ちハイレゾショット特有の弱点を挙げるとすれば、構図が安定しない、水平を出しにくいのがちょっとストレス。さきほどの比較用作例2組はたまたまちゃんと水平が取れている(なんなら比較用の通常撮影の方がダメ)のですが、これは何回も長い処理時間をイライラ待ちながらリトライしたもので……E-M1Xの電子水準器が元々見づらいことも相まって、これが地味に面倒。せっかくアップコンバートしても後から角度補正が必要になってしまうと台無しですから、やや仕上げるのに手間というか気をつかう部分ですね。

ただのクロップではない「デジタルテレコン」

続いて試してみた機能はデジタルテレコン。要は画像の中央部分のみを切り出すことで、デジタルズームのようなことをする機能です。フルサイズ機ではAPS-C相当にクロップするような機能がよくありますが、元々センサーサイズの小さいマイクロフォーサーズ機でそこからさらに切り出すというのはあまり期待できない気がしますが……どうでしょうか。

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上の2枚は、高倍率ズームレンズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO」の望遠端=100mm(35mm判換算200mm相当)で撮影したものと、さらにデジタルテレコンで2倍、つまり換算400mm相当まで引き伸ばしたものです。てっきり単純に切り出すだけかと思っていましたが、デジタルテレコンを使っても同じように幅5,184ピクセルで出力されたということは補完処理も行っているのでしょう。期待以上にシャープな画が得られました。

デジタルテレコンによる拡大を経ても見られる写真が出てくるかは、そもそものレンズの性能に左右されるところもありますが、比較的解像力の高い12-100mm F4.0で使ってみた感触としてはそこそこ実用的。補完処理はハイレゾショットのように複数枚のデータを重ねているわけではないため、デジタルテレコンは動体相手にも一応通じます。

おまけ:ハイレゾショットとデジタルテレコンの併用はできる?

さて、ここである素朴な疑問が浮かびました。「ハイレゾショットとデジタルテレコンの合わせ技ができれば、もっと引き伸ばし感のない画質で望遠ごっこができるのでは?」と。

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補完しやすそうな直線ばかりで構成された被写体で試したおかげか、少しエッジがしっかり立っているかな?と実感できる程度には効いているように思います。

撮影時間やファイルサイズに見合うアドバンテージがあるかはともかく、不可能ではないようですね。通常のハイレゾショットと同様に被写体の得意不得意があることさえ注意しておけば、どうしても望遠寄りの画角を稼ぎたいときの応急処置としては使えそうです。

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