発売当時はマイクロフォーサーズ機としては異例の40万円近い強気の値付けだったのに、今では新品でも15万円強、中古なら10万円以下という散々な市場価値になってしまっている「OM-D E-M1X」。値段と巨大さを度外視すれば興味深いカメラではあり、この値段なら遊んでみてもいいかなと思ったので最近拾ってきました。
このカメラ、ボディもマイクロフォーサーズのくせに1kgぐらいあってバカデカいんですが、実は取扱説明書もイマドキの電子機器とは思えないぐらい分厚く、ガラケー時代のような立派な冊子が入っています。
なんでこんな分厚い説明書が必要かといえば、オリンパスのカメラのメニュー構成はぐっちゃぐちゃで分かりにくいから……じゃなくて、フラッグシップ機らしく発売当時のOM-Dシリーズで実現可能な限りの機能はすべて詰め込まれていますし、上級ユーザー向けの細かなカスタマイズ項目も多いからです。
説明書の話から入っておいて恐縮ですが、正直こんな厚い冊子に隅々まで目を通す気力はないので、適当にあれこれと弄ってみては「えっ、こんな機能まであるんだ!」という成り行き任せの未知との遭遇を楽しんでいます。そんな中で、先日たまたま目に留まった「デジタルシフト」という機能を試してみました。
以下、作例はすべてFlickrに元サイズでアップロードしたものを埋め込んでいるので、リンク先で拡大してご覧ください。
何ができる機能なのかは、ひとまず見てもらった方が話が早いかも。まず、これが24mm相当の画角で普通に撮った写真です。同じ場所からデジタルシフト機能を使って撮ってみると……
こうなります。普通のレンズで撮ったときには絶対に付くはずのパースが消え、妙にまっすぐな変わった写真になったのがご理解いただけたでしょうか。
これは「シフトレンズ」と呼ばれるニッチな特殊レンズを使って「アオリ撮影」という撮り方をした場合のような効果を、画像処理で行っているものになります。この作例では垂直方向のみ適用していますが、垂直・水平の各方向への効き具合をダイヤルで自在に調整できます。ライブビューにもしっかり効果が反映されるので、何も難しいことはありません。
アオリ撮影は建築写真によく使われる専門的な手法です。たとえば売り出し中のマンションの全体像を撮りたくても、周りに建物があって望遠レンズでパースを排除できるほど引いて撮ることはできず、至近距離から見上げるような写真ではうまく形や特徴が伝わらない……なんて時に、シフトレンズがあればこんな風にパースを消してきれいに見せられるのです。
デジタルシフトに話を戻すと、シフトレンズがなくても普通の広角寄りのレンズがあれば手軽にそれっぽいことができるというのはコスト的に助かる業者もいそうです。処理の都合でレンズ本来の画角よりかなり狭くなってしまうので、建物全体を収めるには超広角レンズがあった方が良いですね(それでもシフトレンズよりは断然安いはず)。
シフトレンズなんて特殊なレンズ、本当に業務で使う人以外はたとえカメラ好き・写真好きであっても持っている人は滅多にいないでしょう。店頭展示に並ぶことも少ないので触ったことすらない人も多いと思います。私も記憶にある限りCP+で一回触らせてもらったことがあるぐらいかな……。
本来の用途としては超広角~広角で使うものですが、デジタルシフト機能はあくまでただのシフトレンズ風画像処理ですから、どんな画角でも使えます。元々あまりパースのつかない望遠域ではさすがに必要性が薄いでしょうが、お遊びのスナップでは意外と標準域で使うのもありかもしれません。
たとえば上のランドマークタワーの写真のように高い建物を見上げるような構図って、「撮ってみたらなんかパースが付きすぎて思ったのと違う、建物のフォルムがカッコよくない……」ということがありがちです。だからといってわざわざ足で距離を稼いで望遠で構え直すほど、気合いの入った撮影ばかりではないはずです。そんな時にデジタルシフトを使ってあげると、いい塩梅にごまかしが効きます。
ちなみにこれ、E-M1Xに限らずOM-Dシリーズではずっと前からある機能のようです。初代E-M1でさえアップデートで使えるそうなので、機会があれば試してみてはいかがでしょうか。

2022.10.01
「OM-D E-M1X」レビュー:今の値段なら体験しておく価値はある
オリンパスのミラーレス一眼フラッグシップ機「OM-D E-M1X」を中古で購入してしばらく遊んでみました。いまさらではありますが、せっかくな...