マイクロフォーサーズのレンズ資産なんてないのに「OM-D E-M1X」をうっかり買ってしまったので、当然レンズも必要に。前々から気になっていた「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO」という非常に評判の良い高倍率ズームレンズを買ってみました。
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PROは2016年11月にオリンパスから発売されたマイクロフォーサーズ用の高倍率ズームレンズ。上位グレードであるPROシリーズの一員ということもあって、お手頃なレンズが多いマイクロフォーサーズの中では比較的値が張る部類です。発売から6年近く経った今でも、新品で16万円台、中古ならギリギリ10万円を切るぐらいで買えるかな?というぐらいの相場。
お世辞にも明るい未来があるとは言えないマイクロフォーサーズシステムのレンズなのに、これだけ値崩れしていない裏には圧倒的な評価の高さがあります。35mm判換算で24-200mm相当という一般的には画質的に軽視されがちな「便利ズーム」というジャンルにあたる広範囲をカバーしていながら、全域で単焦点レンズ顔負けの解像力を持ちPROシリーズに名を連ね、開放絞りもF4通しで一定という夢のようなレンズなのです。
レンズの外観や仕様をチェック!
まずは外観から見ていきましょう。鏡筒はPROレンズ共通のデザインで金属素材を採用しており、質感は上々。ズームリングもフォーカスリングもゴム巻きではなく金属に細かなローレット加工を施したもので、ホコリが付きにくくお手入れも簡単で助かります。
フォーカスリングには「マニュアルフォーカスクラッチ」という機能があり、AF撮影中にリングを手前にカチッと引くだけでMFに移行できます。一瞬のシャッターチャンスなのに意図した場所にAFが食いついてくれない時などにも瞬時に対応できて便利。この操作は多くのPROレンズに共通していて統一されていることも、とっさの判断で使う機能としては大事ですね。
構えた際に左手親指で操作できる位置に、手ぶれ補正のON/OFFスイッチとカスタマイズ可能なL-Fnボタンがあります。
レンズの直径は77.5mm、長さ(収納時)は116.5mm、重さは561g。インナーズームではないので、望遠端では上の写真ぐらいの長さまで伸びます。
他のシステムも併用している人の目線では特になんとも思わないのですが、超望遠などの極端な物を除くマイクロフォーサーズ用レンズの中では比較的大きいので、サイズや重さを気にする人も少なくないようです。まぁ確かに、E-M1Xに着けて自然なバランスに見えるぐらいなので、E-M5系やPEN系の小柄でグリップの薄いカメラと組み合わせるとフロントヘビーになりそうです。
フィルター径は72mmと大きめ。フィルター1枚あたりの値段で考えるとちょっと懐に優しくないサイズではありますが、「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO」や「M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS」などとフィルター径が統一されているので使い回しはしやすいかと。
レンズフードは別売りではなく付属。樹脂製の簡素な作りで高級感はありませんが、ロック機構がある点は好感が持てます。
実際に撮ってみた
ここからはM.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PROで撮った写真をお見せしながら解説していきます。なお、作例はすべてFlickrに元サイズでアップロードしたものを埋め込んでいるので、必要に応じてリンク先で拡大してご覧ください。
まずはズーム域を確認するためのサンプル。上の2枚はそれぞれ、広角端の12mm(換算24mm)と望遠端の100mm(換算200mm)で撮ったものです。紛れもなく広角から望遠まで一本でカバーできる便利ズームです。
参考までに、望遠端にデジタルテレコンをかけて換算400mm相当にしてみました。この機能は補完処理が入るのでどんな被写体に対しても通用するとは限らないのですが、少なくともこの作例のようなスッキリした写真では十分見られる画質ですよね。デジタルテレコンを活用する前提で考えると、いよいよこのレンズ一本でなんでも撮れてしまう気がしてきます。
そんな守備範囲の広いレンズなら、画質はある程度犠牲になってしまうのが常識。暗黙の了解として、荷物に制約のあるようなエクストリームシーンを除けば、高倍率ズームは本気の撮影には使われないものです。しかし、不思議なぐらい全域にわたってシャープで破綻のない写りを見せてくれるのがこのレンズの恐ろしいところ。伊達に高倍率ズームのくせにPROレンズを名乗ってはいません。
強いて言えば広角端では樽型の歪みが多少見られますが、それも複雑なものではなく後処理で十分対応可能な程度です。
玉ボケの中とかはさすがに現代技術を駆使したレンズだなぁという感じの雑味が残りますが、そもそもフォーサーズでF4程度では大きなボケが生まれる場面はめったにないので重視すべきポイントでもないでしょう。なお、上の写真は多重露光という特殊な方法で別撮りの大きな玉ボケを重ねたものです。
実際使う人からしてもむしろスモールフォーマットならではの被写界深度の深さを活かして全域くっきり解像させたいケースが多いでしょう。そういう意味では、解像力が十二分に良いという時点でこのレンズはすでに合格点を超えています。そもそも、普通のシーンで現れる程度の自然な量の前ボケ/後ボケはこういうスペックのレンズとしては十分きれいですしね。
最短撮影距離は0.15m~0.45m、最大撮影倍率は0.3倍~0.21倍。めちゃくちゃ寄れるレンズが多いマイクロフォーサーズの中では平凡扱いされていますが、APS-Cやフルサイズの感覚では十分寄れます。高倍率ズームだからといって近接撮影が弱点になることもなく、少なくとも標準域のズームレンズと同じぐらいの感覚では扱えるといったところ。手元の写真を撮ったり、テレマクロ風味のことをしてみたり、まったく問題なくこなせました。
ボディ内手ぶれ補正を前提にシステムが組まれてきたオリンパスのレンズとしては珍しく、手ぶれ補正が組み込まれているレンズでもあります。E-M1Xなどで使えばボディ側の手ぶれ補正とシンクロして更に強力な補正を得られますし、かつては難しかったパナソニックボディ+オリンパスレンズの組み合わせもこれなら実用的かと(※パナソニックはオリンパスとは逆にボディ内手ぶれ補正なし&レンズ内手ぶれ補正ありが基本)。
望遠域まで専門の望遠レンズ並みの画質で撮れる上に、近接撮影、防滴、手ぶれ補正など隙のない仕様で、長く支持されているのも納得の一本。このレンズを買うと他のレンズが要らなくなってしまいそうなので、あまりオススメしすぎるとマイクロフォーサーズの売上と将来に悪影響なんじゃないかと思ってしまうほどの万能選手です。

2022.10.01
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