普通の完全ワイヤレスイヤホンは持っているのですが寝る前にYouTubeを見ることも多く、そこで電池を使い切ってしまって翌朝に電車で使えない……ということが時々ありました。それなら自宅用・動画用のイヤホンを別に用意しておくか、ということで、少し気になっていた「COTSUBU for ASMR」を買ってみました。
「COTSUBU for ASMR」の概要
COTSUBU for ASMRは、オーディオメーカー「final」のサブブランド「ag」から発売されている完全ワイヤレスイヤホン。「世界初のASMR専用完全ワイヤレスイヤホン」という特殊モデルとして2021年11月12日に発売されました。価格は7,480円で、かなりニッチな製品ゆえか今のところ直販のみの扱いとなっています。
agはワイヤレス製品に特化したサブブランドで、本家finalと比べてどちらかと言えばライト層向けの雰囲気で手に取りやすい製品が揃っています。本製品はagの定番商品のひとつ「COTSUBU」をベースにしたASMR仕様とも言えますが、コンセプト的にも設計的にもむしろfinalのASMR専用機(有線)「E500」のワイヤレス版という位置付けでag色は薄いです。
ざっくりとスペックもなぞっておくと、チップはQualcommの「QCC3040」を搭載し、対応コーデックはSBC/AAC/aptX。親機・子機の切り替えを自動で行って安定性を高めるQualcomm TrueWireless Mirroringにも対応しています。 IPX4の生活防水仕様で、充電ケースによる再充電を含まない純粋な連続再生時間は最大5時間です。
外観・付属品をチェック
開封してみました。イヤホン本体とケースのほか、充電用のUSB Type-Cケーブルも入っていました。付属のイヤーピースはもちろんfinalの「TYPE E 完全ワイヤレス専用仕様」で、本体に装着済みのMサイズのほか、S/Lサイズが添付されています。
本体やケースの形状は通常版のCOTSUBUと変わりませんが、7色の豊富なカラーバリエーションがある通常版に対し、ASMR仕様はパープルだけ。
1色だけならもう少し無難な色でもいいような気もしますが、なんとなくASMRっぽい色だなという妙な納得感がありますし、これを買う人は音楽用の普通のイヤホンもほぼ間違いなく持っているでしょうから、見分けやすくて良いと思います。外で使う物でもありませんしね。
イヤホン本体は片側3.5gと軽く、名前の通り小粒なサイズ。耳の形状を問わずフィットしやすいよう配慮されているということで、ロゴは横向きに入っていますが、着けてみると人によっては縦に近いポジションになったりします。
同社のまともな(?)音楽用の完全ワイヤレスイヤホン「ZE3000」と並べてみました。ZE3000のケースのバッテリー容量は300mAh、COTSUBU for ASMRは200mAhと少なく、収納されるイヤホン自体のサイズも違うのでケースはかなりコンパクトです。
使い勝手は他のfinal/agのワイヤレス製品と同様にシンプル。フタを開けたらペアリング待機状態となり、あとはスマートフォンなどのBluetooth設定画面で機種名を探すだけ。設定変更などを行う専用アプリは特に用意されていません。
実際に使ってみた感想
ノーマルのCOTSUBUは軽く試聴したことがある程度ですが、ちょっと低音が過剰でfinal製品の音とは違い、あくまでagブランドはagブランドで(悪く言えば)一般ウケを狙った製品なんだなという印象でした。
COTSUBU for ASMRはドライバー設計から手を入れているので音質面ではノーマルのCOTSUBUとの関連性は薄いです。開発時期や価格帯的にfinalブランドではベースになる物が存在しなかったからCOTSUBUを利用したというだけで、本質的には「ag COTSUBUのASMR版」ではなく「final E500のワイヤレス版」なのでしょう。
ゾワゾワ系ではなく穏やか安眠系
そんなことを言っておいてE500を聴いたことがないので、漠然と「ASMR用のイヤホンってどんな音がするんだ?」と興味を持ちながら買ってみたわけですが、聴いてみてなるほどと腑に落ちました。
一口にASMRと言っても色々ありますよね。手をかえ品をかえ、ゾワゾワ・ゾクゾクするような脳に響く音を追求する高刺激系もあれば、ささやき・耳かきなどの穏やかな系統もある。海外発の陽の若者の文化として一時期流行っていたのは前者で、日本のOtakuがこっそり聴いてるのは後者ですよね(え?)。それで言うと、COTSUBU for ASMRの想定している音源は完全に後者かと。穏やかな音で、睡眠導入系のASMRに向いています。
バイノーラル音源に特化したイヤホンと聞いて、最初はわずかな物音も確実に描き出すような繊細でピーキーなサウンドを想像していましたが、むしろ高音域はかなり丸められていて不快感のある音は一切出ません。それでいて定位と立体感がしっかりしていて、音楽的なクリアさとは違うけれど妙な生々しさがある、といったところでしょうか。
ASMR以外の動画やアニメ鑑賞にも良いと思う、音楽は微妙
7,000円のイヤホンを安いと感じるのはオーオタだけで、一般的にはASMR専用というニッチすぎるイヤホンに7,000円出すのはなかなか……という人も少なくないはず。私は別にオーオタではありませんが他のイヤホンは色々あるので本当にASMRにしか使えなくても困らないのですが(?)、一応他の用途も試してみました。
音楽用途はこだわらない人なら行けなくもないかもしれませんが、基本的には微妙。ボーカルが埋もれた印象になり、高音域はシンバルなどが妙に浮きます。やはりASMR用にディテールを強調する傾向ゆえに音楽向きのバランスではないのでしょう。ゲームのサントラなどの比較的シンプルなトラック構成のインスト曲では「意外とイケるかも?」と思わされることもありますが、あくまで例外です。
ASMR以外でアリな用途としては、人の声がきれいに出るイヤホンなのでASMR以外の一般の動画やライブ配信、アニメ鑑賞などにも向いています(歌モノはダメですが)。私も別にASMRはそんなに聞かず、入眠用の動画としてよく流しているのは落ち着いた空気のたわいもない雑談枠とかの方が多いので……「ASMR専用」というところにハードルの高さを感じる必要はなく、意外と何かしら使いどころは見つかるかも?
「寝ホン」としての素性が良い
これはCOTSUBU for ASMRだからというよりCOTSUBU自体の素性の良さですが、「寝ホン」向きの作りですね。小さめで角のない形状なので耳が痛くなりにくいですし、装着時に外に張り出す部分もないので横を向いても支障がありません。E500に対する最大のアドバンテージ、そして持ち歩くわけでもないASMR用イヤホンをワイヤレス化する最大のメリットとして、寝返りを打ってもケーブルが絡まないという大きな利点もあります。
ASMRを聴く人に限らず、動画やライブ配信、ラジオなどで寝ながらイヤホンを使うことがある人なら持っておいて損はないと思いますよ!