Xマウント最初期のズームレンズ「XF18-55mm F2.8-4」を最新40MP機で使ってみる

カメラ

先日、富士フイルムの新型ミラーレス「X-T5」を購入しました。少し買い方やレンズの布陣を思案していて出遅れたので、発売日を少し過ぎて在庫がほぼ一掃されたタイミングで必死に探し回ったわけですが、その結果、ボディ単体の在庫は絶望的に無く、ズームレンズ付きのレンズキットで購入することに。

どうせ1本は標準域のズームレンズを持っていないと実用上困りますし、私は出戻り組でXマウントのレンズは1本も持っていない状態からのスタートですから、レンズキットで買うこと自体にはさほど抵抗はありませんでした。

ただ、このX-T5や一足先に発売されたX-H2には「X-Tran CMOS 5 HR」という新型イメージセンサーが搭載されており、これがAPS-Cで4,020万画素という異例の高画素・高密度仕様なのです。これまでのXシリーズには当然なかったスペックですから、初搭載されたX-H2の発売時には、公式サイトで「X-H2の4,020万画素高解像をフルにお楽しみいただける」レンズリスト(要するに40MPフル対応レンズ)が公開されたほどです。

ここからがおかしな話で、X-H2のキットレンズとなる「XF16-80mmF4R OIS WR」もX-T5のキットレンズとなる「XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS」も推奨レンズではありません。おすすめしないのに抱き合わせで売りつけるとは一体……?

「なんちゅう汚い売り方をしやがるんだ」という気持ちも無くはありませんでしたが、40MPフル対応レンズではないので新規ユーザーは敬遠しがちで、Xマウントの中でも最初期のレンズで所有者が多いので既存のXマウントユーザーも買いにくい……という誰向けなのかよくわからないレンズキットのおかげでX-T5本体を待たずに入手できたのですべて許しました。

それに、私は過去にXマウントを使っていた時期にもこのレンズを持っていてX-T3やX-Pro2で使っていましたから、決して「10年前の古い設計のキットレンズ」という一言で片付けられるような酷い物ではない、むしろ良いレンズだということも知っています。最新の40MP機でも使い物になるのか、試してみたい気持ちも出てきたのです。

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まずはウォーミングアップとして、画角の確認から。このレンズは35mm判換算で広角27mm~中望遠84mmまでをカバーする標準ズームレンズです。上の2枚は同地点から広角端・望遠端でそれぞれ撮影しました。

他社の同クラスのレンズだとF3.5-5.6のようなスペックの物が多いと思いますが、F2.8-4と全域で1段分明るめになっているのがちょっと珍しいですね。

ちなみに、標準ズームレンズなんてまともなカメラシステムなら一番最初に発売されるのが当然でしょうけれど、Xシリーズはちょっとおかしいので、最初のボディとカメラが発売された2012年2月の時点では18mm F2、35mm F1.4、60mm F2.4(マクロ)という3本の単焦点レンズしかなく、最初のズームレンズとして18-55mmが発売されたのは実に9ヶ月後の2012年11月でした。今思うといきなりユーザーをふるいにかけすぎだろ……

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あ、作例はFlickrに大きいのを上げて埋め込んでありますので、拡大して確認したい方はそちらへ。

上の2枚はこのレンズの解像力のピークであるはずのF5.6~F8付近で撮ったものです。拡大してじっくり眺めれば確かに1枚薄布がかかったようなキレの悪さを感じるものの、そもそもX-Transって割とこういう画だよね?という気もします。ポップコーン現象がどうのこうので引き構図の花や木には元々弱いですからね(特にJPEGだと)。

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案の定、無機的な都市風景にサンプルを切り替えてみると、ぼんやり感はなおさら減りました。

もちろん、「レンズの性能がセンサーに負けている」という事実がまったくないわけではなく、ピントが合っているはずの部分を拡大してみればディテールの甘さがあるのは見て取れます。それでも、等倍マニアなどではない普通の鑑賞の仕方をする分には「推奨レンズ以外の組み合わせなんて論外!」と言い切れるほど悪いものではなさそうです。

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さほど繊細な解像力を求められないテーブルフォトだったり、ボケを使った写真だったりすると、いよいよ何も気になりませんね。普通に「いつものフジの画」という印象です。

何もかも写す高画素機らしさはない写真なのに、ファイルサイズだけはしっかり重いので損といえば損かもしれませんが……でも、「センサーの性能にレンズが追い付かない」組み合わせというのは裏を返せば「レンズの性能をセンサーが上回っていて引き出し切れる」組み合わせでもあり、お気に入りの旧レンズを新しいカメラにつけてもそのレンズらしい写真はちゃんと撮り続けられるわけで、決して0点ではないはずです。

ちなみに、例の「お楽しみいただけるレンズ」の定義は開放で隅々まで40MPでの記録に耐えうる解像力を持っているレンズということのようです。これまで発売されてきたXマウントレンズには、感性に訴えかける設計思想で元から解像力を最重視していないレンズもあるので(というか多数派)、はっきり言ってあんなの新世代レンズを売るためのセールストークだと受け流してしまってもいいと思いますよ。

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このXF18-55mmF2.8-4 R LM OISというのは不思議な魅力のあるズームレンズで、そういう意味では“高画素機の無駄遣い”をしてでも遊んであげる価値があり、持っておくのも悪くないと思います。

ズームレンズ、それもレンズキットに入るクラスの物なんて実用一点張りでそこそこ写ればいいような味気ないものであるのが普通でしょうけれども、これはある種、単焦点レンズのような妙味があります。あ、雰囲気の話ですよ。全域で単焦点レンズ並みの性能があるとかそういう話ではないので念のため(レッドバッジじゃないんだから!)。

ボケもそこそこ綺麗ですけど、個人的には柔らかな光の捉え方がいかにもフジのレンズっぽい味わいだなと。実用品のズームレンズじゃなくて、トリエルマーみたいな「いくつかの画角の単焦点レンズをひとまとめにしたもの」ぐらいの感覚で散歩に連れて行きたくなるレンズです。そして、そんな向き合い方に40MPセンサーと解像力がどうとかはもはや関係ありませんから……X-T5の軽快さを活かし、レンズシミュレーションに代表されるフジらしい画作りを気軽に味わう最初の一本としては、案外悪くないんじゃないでしょうか。

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