【ベストバイガジェット2022】X-T5:俺たちが求めた富士フイルムの“写真機”が帰ってきた

カメラ

ブロガー界隈ではすっかり年末の風物詩となったアドベントカレンダー。今年もぜろ(@_0_zero)さん主催の「今年のベストバイガジェット Advent Calendar 2022」に参加させていただきました。

カレンダー以外からこの記事にたどり着いた方向けにざっくりと趣旨を説明しておきますと、12月1日~25日の25日間、持ち回りでそれぞれの「今年一番『買って良かった!』と思うデジタルガジェット」について語るという企画です。今年で8回目になるそうで、面白い記事ばかりなのでぜひカレンダーから他の方のブログも覗いてみてください。ちなみに、昨日の担当はかんざき(@8d6x)さんで、選ばれた物は「Galaxy Z Flip4」でした。

私が選ぶ2022年のベストバイガジェットは「FUJIFILM X-T5」!

私が選ぶ2022年のベストバイガジェットは、富士フイルムから11月25日に発売されたミラーレス一眼カメラ「X-T5」です。1年間の買い物を振り返るという趣旨からすれば滑り込みもいいところですが、付き合いは短くても間違いなく今年の買い物すべてを上回る満足度だったので迷わず選出しました。

12月初旬にズームレンズ「XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS」付きのレンズキットで購入し、価格は286,110円でした。良いカメラには良いレンズを奢らないと失礼ですから、「XF33mmF1.4 R LM WR」(104,445円)も同時に購入。まさかAPS-Cミラーレスとレンズ2本で40万近くまで行ってしまうとは……

短期的には痛い出費でしたが、用途や好みに完璧と言っていいほどマッチするカメラであり、他の手持ち機材をすべて売り払って1台にまとめる決心がついたので後で返ってくるはずのお金ではあります。この話をすると長くなるので、カメラ遍歴については以下の記事で。

選出理由①:コンセプトから文句なしに刺さり、Xへの出戻りを決意

私は直近ではニコンZユーザーでしたが、数年前に富士フイルムのXシリーズを愛用していた時期がありました。特にX-Trans CMOS IIIの画作りが好きで、第3世代機はカメラそのものも各シリーズの魅力がよく出ていて名機ばかりでしたから、X-H1、X-Pro2、X100Fと3機種も買ってしまったほどです。

しかし、その次の第4世代は画作りも製品としての方向性もどうも好きになれず、自然と離れてしまいました(そう言いつつ、一応X-T3とX100Vは買ったんですけど)。X-Pro2が大好きだったので常人には理解不能な縛りプレイ専用カメラへと変わり果ててしまった後継機にはがっかりしましたし、それ以上に、とても楽しみにしていたXF33mmF1.0(仮)の開発をキャンセルして「代わりに50mmF1.0を作る」と意味不明なことを言い出した時にはブチ切れそうになりましたね。

とはいえ、私怨や思想を抜きにして見れば、右も左もフルサイズに浮かれるなか、どこよりも真剣にAPS-Cミラーレスを作っているのは富士フイルムだということは疑いようがありません。

カメラ沼(って言葉はキモくて嫌いなんですけど)歴も短くはなくなってきましたし、結構とっかえひっかえ色々使ってきているのでセンサーサイズ信仰のような浅はかな考えはとうに持ち合わせていません。実用シーンでは小物の物撮りや片手での撮影をすることが多い関係で被写界深度やシステム重量の兼ね合いでAPS-Cがベストと考えていますし、趣味でカメラを握る時は大半がスナップなので、それもまた機動力重視というか「毎日持ち歩けるカメラが一番良い写真を撮れる」という考えです。

そんなわけで、「今の富士フイルムなんて大嫌いや」と思いつつ横目で見てはいたのです。そして11月2日。なんとなく噂に聞いてはいたX-T5の全貌を知って、Xへの出戻りを決意しました。

性能・仕様面でも驚きに値する内容ではありましたが、それ以上にコンセプトが心に刺さりました。「Xシリーズの原点である『小型・軽量・高画質』に拘り、写真を最優先に設計された製品」「原点回帰」「進化した“写真機”」――そんな言葉が並ぶ製品ページニュースリリースを見て、諸々のわだかまりが解けたと同時に、あの頃のXユーザー、いや、写真機を渇望し動画機を疎むすべてのスチルユーザーが本当に欲しかった物を作ってくれたなと感激しました。

それだけでも、購入という形でいち消費者にできる最大限の礼を尽くすべきかもしれません。野暮は承知で中身の話もしておくと、まずは新型イメージセンサー「X-Trans CMOS 5 HR」を搭載。これはAPS-Cクラスでは異例の約4,020万画素という高画素仕様の裏面照射型CMOSセンサーです。

その他の見どころとしては、5軸最大7.0段のボディ内手ぶれ補正を組み込みながら、代を重ねるごとに少しずつ大きくなっていたボディサイズをX-T2よりわずかに小さいほどまで小型化。そして、AF機能もX-H2譲りで最短約0.02秒とクラシックな見かけによらず速く、鳥などの被写体検出AFにまで対応しています。

選出理由②:動画全盛時代に突如現れた貴重な“写真機”

富士フイルムに限ったことではありませんし、ただでさえ斜陽産業なカメラ業界のなかでどちらの方がマシな大きさの市場かを考えたらやむを得ないことではありますが、ここ数年のミラーレスは(一部コンデジもそうかな)、スチルカメラの枠内にありながら実際には完全に動画屋の方を向いた製品ばかりです。

モデルチェンジ時のアピールポイントが「4Kナントカかんとかで撮れます!」みたいな自分たちは一切使わない機能の追加ばかりで、用のある部分は大して進化しないのに製品価格だけがどんどん上がっていく……それだけならまだ、どこも苦しいはずのカメラメーカーへのお布施と思えばギリ我慢できました。でも最近は、プラスにならないどころかマイナスになることさえ出てきてしまいました。そう、「背面液晶、チルトかバリアングルか」問題です。

富士フイルムも例外ではなく、歴代Tシリーズの長所のひとつだった3軸チルト液晶をX-T4でついに捨て、自撮りが必要なVlogユーザーに媚びたバリアングル液晶になってしまったのですが、X-T5では改心して(?)3軸チルトに。

もっとも、動画をやりたい人にはX-S10やX-H2/X-H2Sもあるわけですから、こういう商品性や棲み分けを無視した改悪でユーザーにボコボコにされて半泣きで戻しただけのことをあまり褒めたくはないのですが……端的な事実として、富士フイルムが3軸チルトを捨ててから復活させるまでの数年の間に他社でもチルトだった機種の後継機が軒並みバリアングルになってしまいましたから、我々のような写真機で写真を撮る少数派(?)は富士フイルム様の靴を舐めてご機嫌を取らざるを得ないようです。

もちろん、ただ液晶の開き方だけで動画機か写真機かが決まるはずはありません。富士フイルムのカメラといえばやっぱりコレ、代々受け継がれてきたダイヤル操作も魅力ですよね。モードダイヤルを持たない独特の操作系に困惑する人も少なくないでしょうし、事実、入門機や動画機では良くも悪くも普通の操作系に変更されつつありますが、TシリーズとProシリーズだけはいつまでもこうであって欲しいものです。露出決定の基本が分かっていれば、こんなに直感的で扱いやすいカメラはありません。

実際に手元に来て使い始めてからも印象のズレはなく、実にストレスなく、気持ち良く撮れるカメラでした。X-H2よりはドット数が少ないとはいえ、EVFも相変わらず見やすいですし、控えめなシャッター音もスナップシューターとしてはいい感じです。

実は私、3~4年前に一時期4,000万画素オーバーのカメラを使っていて、その頃は運用面でのデメリットやストレスが多く「人類に高画素機はまだ早い」と手を引き、その後は同系統の機種で画素数を選べるケース(Z 6IIとZ 7IIとか)に直面しても迷わず低画素のノーマル仕様を選ぶぐらい、高画素機アレルギーになってしまっていました。

そんなわけでX-T5のことも少し警戒していたのですが、使ってみてびっくり。少なくともスチルで使う分には書き込みの待ち時間や連続撮影時のレスポンスも快適そのものですし、何より電池持ちがいいんです。カタログ値でいえばノーマルモードで580枚、エコノミーモードで740枚。不思議なことに、同じバッテリーを使うX-T4(約2,610万画素)より増えてるんですよ。それだけ第5世代エンジン(X-Processor 5)の省電力性能が上がっているのでしょうね。

ちなみに、メーカーも私も写真機、写真機と連呼していますが、動画が苦手なカメラというわけではありません。むしろ動画特化のX-H2SやX-H2を兄弟機に持つだけあって動画性能は高いぐらいで、マーケティング戦略によっては本機種もハイブリッド機と呼んでいてもおかしくないぐらいのポテンシャルはあります。8K映像を撮りたいとか、熱対策が必要なほどの長回しをしたいとかでなければ十分すぎるほど撮れるので、「写真メインでたまに動画も撮りたいかも」という人もご安心ください。

上の動画はX-T5を使って、手持ち(しかも不安定な縦向き)で撮ってみたものです。縦4Kなんて妙な視聴環境がある人はあまりいないかと思いますが(私もありません)、参考までに添付しておきます。

選出理由③:長年待ち望んだ33mm(換算50mm)の高性能単焦点を使える喜び

これはX-T5自体の評価ポイントではありませんが、高画素機をお迎えするのとそれに釣り合うレンズを用意することはセットのようなものですし、Xに出戻りして良かったことという意味でもひとつ。

冒頭にも書いたように、X-T5を買うに当たって最低1本は40MPセンサーの実力をフルに引き出せるレンズを用意しないといけないだろうとXF33mmF1.4 R LM WRという単焦点レンズも買いました。APS-C用の標準域の単焦点レンズで10万オーバーは正直ドン引きプライスですが(半分ぐらいじゃねーの!?)それに見合う価値はありました。

これは40MPセンサー搭載機の開発も進んでいたであろう時期に発売された新世代レンズの1本で、過去のXF単焦点レンズ(特に大口径プライム系)とはだいぶ毛色が異なります。XF35mmF1.4 Rなどの旧・大口径プライムシリーズは解像力やシャープネスは二の次(そこを重視するならコンパクトプライムの方が良いぐらい)にして、ボケ味や雰囲気の良さを取ったデジタル時代の現行レンズらしからぬチューニングで、そこがXシリーズの味や魅力でもありました。

それはそれで素晴らしい路線だったことは間違いありませんが、前人未到のAPS-C 40MPセンサーを前提に作られた新世代大口径プライムはそんな生ぬるいものではなく、これまでとは違った正統派路線での富士フイルムの本気が見られます。例えるならNIKKOR Z 50mm f/1.2 SとかRF50mm F1.2 L USMとか、ああいう新しめのフルサイズミラーレスシステムを象徴するフラッグシップレンズによく似ています。開放から完璧に写り、被写界深度をコントロールする以外の目的で絞る必要がない――そういう類のレンズです。

実は私、Xマウントを離れていた数年の間に、それこそNIKKOR Z 50mm f/1.2 Sなんかも所有していたんですよ。XF33mmF1.4 R LM WRを手にして、この感覚に少し懐かしさも覚えました。

引き合いに出したフルサイズミラーレス用のフラッグシップレンズたち(ZとRF以外だと、LUMIX S PRO F1.4あたりもそうかな)はどれも、ぶっ飛んだ性能の代償として「望遠レンズかよ」とツッコミたくなるようなサイズになってしまっています。しかし、X-T5とXF33mmF1.4なら900gちょっとでその手のレンズに近い景色が見られるのです。繰り返しになりますが、「毎日持ち歩けるカメラが一番良い写真を撮れる」という思想からすれば、こんなに素晴らしい組み合わせは他にないかもしれません。

実際、前々から毎日カメラを持ち出すこと自体は習慣化しているのですが、これまでなら特に撮影の予定がない日は幅広く対応できるズームレンズをつけっぱなしでカバンに放り込むことが大半でした。X-T5とXF33mmF1.4が来てからはすっかり関係が逆転してしまい、ズームレンズが必要な用事がはっきりしている日だけ18-55mmで、それ以外は常に33mm。ケのレンズとして扱えるコンパクトさなのにハレのレンズとして通用する写りという、夢のような装備です。

それに、かつて夢見て裏切られた「33mm(換算50mm)のガチ単焦点」ですからね。40MP機投入に合わせた35mm F1.4のリニューアルという形での登場であり、あの構想ほどサイズ感を無視した超ド級のスペックでもなければ開放F値も違いますが、これでいい……いや、むしろこれがいいでしょう。誠意は受け取りました。

おまけ:X-T5で撮った写真を見てくれ

毎日飽きもせず機材のことばかり語っている割に、写真はヘタクソだったり酷いとろくに撮ってなかったりする“カメラ好き”、大嫌いなんですよね。ああなりたくはないし、あの群れにだけは入りたくもないと思っているので、大した腕は無いなりに日々カメラを振り回しているわけです。

5,000字もカメラについて語ってしまった以上、それに釣り合うぐらいの写真も出さないと自分のポリシーに反するので、X-T5で撮った写真たちもぜひ見ていってください。

26枚すべてにコメントまで添える時間はなかったので淡々と並べる形になってしまい恐縮ですが、各自で感じていただければ……

DSCF0087

DSCF0089

DSCF0108

20221206-195131-0

20221208-175459-0

20221209-135859-0

20221210-125844-0

20221210-130203-0

20221210-171055-0

20221210-174005-0

20221211-092214-0

20221211-093815-0

20221211-102703-0

20221211-104439-0

20221211-105639-0

20221211-105756-0

20221211-110822-0

20221211-113608-0

20221215-133141-0

20221215-133950-0

20221215-130914-0

20221216-190107-0

20221216-190531-0

20221216-191632-0

20221216-192453-0

20221216-192627-0

最後にもう一度。今回は「今年のベストバイガジェット Advent Calendar 2022」に参加させていただき、20日目の記事を担当しました。明日(21日目)はガジェットタッチのてんび~(@_tenbi)さん!ベテランブロガーの彼がどんな物を選ぶのか、楽しみですね。

(12/21追記:まさかの2日連続で似た方向性のカメラ談義が並んでしまいました → 【ベストバイガジェット2022】ぶっちぎりの選出、ソニー『α7R V』は「カメラマン」待望の高画素機 | ガジェットタッチ

関連記事

TOP