出戻りXシリーズユーザーとして「X-T5」を使い始めてからもうすぐ1ヶ月。3本目のレンズとして「XF23mmF2 R WR」を購入しました。このレンズ自体は2016年に発売された物ですでに良いレビュー記事がたくさんありますから、ここでは第5世代の高画素機で使った印象や選定理由を中心に書いていこうと思います。
「XF23mmF2 R WR」を選んだ理由
私は数年間Xシリーズを離れていた出戻りユーザーですので、過去に所有していたXマウントのレンズは手放しており、X-T5を迎えるにあたって一からレンズ構成を考え直しています。
現状手元にあるレンズは、キットレンズの「XF18-55mm F2.8-4 R LM OIS」と個人的には本命の「XF33mmF1.4 R LM WR」、そして今回買ったXF23mmF2 R WRの3本です。
Xマウントには良いレンズがたくさんあるので(特に単焦点)、1本ごとに「欲しい」「欲しくない」の2択で考えていけばそりゃ欲しいレンズはいくらでもあるのですが、いい加減カメラ歴……いや、煩悩機材転がし歴も長いので、最近はけっこう冷静な選択ができるようになってきたと自負しています(これを見ても本当にそう言えるのか?)。
今持っているレンズも1本1本それなりに意味のある選択をしました。まずレッドバッジでもなければ40MP対応でもないレンズをズーム要員に据えているのは、経験上、標準域のズームレンズに強すぎる物を選ぶとそれしか使わなくなるからです(※レンズキットじゃないと在庫が無かったという事情も)。この選択のおかげで実際、どうしても実用上の理由でズームレンズが必要な日以外は基本的に単焦点レンズを着けて持ち歩いており、思惑通りいつでも本気で撮れる状況になっています。
勝負レンズにXF33mmF1.4 R LM WRを選んだ理由はシンプル。33mm=フルサイズ換算50mmという撮影ジャンルと感覚に合った得意な画角で、高画素センサーやAF性能などX-T5のポテンシャルを引き出せるレンズと考えたらこれ一択だったからです。APS-Cの標準単焦点で10万オーバーは正直ちょっと高いなとは思ってしまいますが。
では、その33mmの次に単焦点レンズをもう1本買うなら?

Xマウントレンズロードマップ(2021年9月時点 / 出典:富士フイルムのニュースリリース)
順当に考えれば、同じく高画素機への対応を前提に開発された「新世代・大口径プライム」シリーズから画角違いでもう1本選ぶのが自然でしょう。具体的には、XF18mmF1.4 R LM WR、XF23mmF1.4 R LM WR、XF56mm F1.2 R WRの3本です。もちろん、個々で見ればどれも非常に魅力的なレンズだと思います。
ただ、自分の使い方では単焦点レンズを2本も3本もカメラバッグに詰めて持ち出して外でガチャガチャ交換しながら撮るということはほとんどなく、それなら家を出発する時点で「今日はこれにしよう」と決めた画角で集中してテンポ良く撮り続ける方が性に合っているという実感があります。同時に持ち出すのは1本だけという前提で考え直すと、仮に18mmや23mmも並んでいたとしても、「一番得意なのはこれだから」と33mmばかり使ってしまうのは目に見えています。
そんなわけで、同系統の画角違いは要らないと判断しました。でも毛色の違うレンズなら、その日の気分や持ち物、お出かけの主目的などによっては選択肢に入ってきて出番を与えられるんじゃないでしょうか。そう、画質重視のレンズと携帯性重視のレンズなら別腹だろうってことです。
XF33mmF1.4 R LM WRを選ぶ上ではX-T5の「最新世代の高画素機」という性質を考慮しましたが、別の視点ではX-T5は前世代よりも小型・軽量になった軽快なカメラでもあります。そっちの路線で良さを引き出せるのは、やはりコンパクトプライムシリーズのF2単焦点でしょう。つまり、画角ではなくキャラクターで使い分けるつもりでXF23mmF2 R WRを選びました。
……そうは言いつつ、XF35mmF2 R WRを選ばず画角での使い分けの余地も残してしまったあたりは、貧乏性なのかストイックさが足りないのかなとは思いますけどねw
実写レビュー
今回はみんな大好きマップカメラで中古(良品)を購入しました。箱などは無かったので開封の儀とかは省略。レンズフード欠品ということで、同等コンディションの物と比べて少し安く買えました。
元々、純正のちょっと良い別売フード「LH-XF35-2」を買うつもりだったので、使わない標準フードの分で安くなったのはラッキー。まぁ、レンジファインダースタイルのX-Proシリーズでも無いのにスリットフードを着けるのって機能的には無意味なんですけどね。カッコいいからいいじゃないですか。
ちなみにこれ、見栄えの良い金属製でありながらバヨネット部分の目立たないリングは樹脂パーツを組み合わせてあります。メタルフードにありがちな「万が一ぶつけた際にフードで衝撃が吸収されず、レンズやボディに伝わってしまう」「フードが歪むと外せなくなる」といった弱点をさり気なく潰してあるあたりはさすが純正品ですね。ちょっと高いかもしれませんが、ヘタな互換品を買うより絶対これがオススメですよ。
さて、早速X-T5とXF23mm F2 R WRで撮った作例をお見せしていきましょう。ちなみに、こんなにコンパクトなレンズですが、例の「X-Trans CMOS 5 HRの高画素をフルにお楽しみいただける」レンズリストに含まれています。
個人的には正直、レンズ構成や基本設計は変わらない廉価版の「XC35mm F2」はリストに入っていないあたり、マーケティング上の理由で線引きされた“ギリギリ40MP対応扱い”のレンズなんじゃないかと疑惑の目を向けていますが……もちろん、価格なりに製造品質や精度に差があるのかもしれませんけどね。
ただ、新世代大口径プライムが出てくるまでの評価としては「F1.4(大口径プライム)は味を残した描写、F2(コンパクトプライム)はシャープ」とよく言われていましたから、23mm F1.4 / 35mm F1.4が40MP非推奨で23mm F2 / 35mm F2はOKというのは納得できる話ではあります。
“フルにお楽しみいただけるレンズ”の基準は、絞り開放かつ周辺部でも40MPセンサーに耐えうる解像力があるかだそう。しかし、実際に使ってみた印象としては、XF23mm F2 R WRと40MP機の組み合わせは開放から不安なく使えるとは言い難いですね。上の2枚はF2とF8で撮り比べたものですが、F2ではかなり派手に色収差が出てしまっています。
もちろん被写体によっては普通に使える場面もあり、これはあくまで悪い例です。こういう構造物や枯れ枝なんかが写る場面ではF4以上に開くとあっさり弱点が露呈するので、推奨レンズとはいえ新世代大口径プライムのように信じ切って良いわけではなく、多少考えてやる必要があるねということです。
まぁ、そもそもあまり推奨・非推奨の線引きに固執せず自分の意思で使いたいレンズを選んだ方が良いですよ。何に重きを置いて作られたレンズなのかを見極めて、長所を引き出してやればいい。それは16MPだろうが24MPだろうが40MPだろうが何も変わらない話ですから。
レンズ単体で180g、ボディと合わせても737gと軽量な構成なのに、ちゃんと高画素機らしい画が出るというのはなかなか他にない感覚です。高性能お散歩カメラですな。
クロップで撮ったり多少トリミングしたりしても全然見られますし、防塵・防滴もクリアしている組み合わせですし、意外と対応できるシーンは幅広いかと。
35mmではなく23mmを選んでおいて良かったなと思う点は、テーブルフォトでの使い勝手の良さ。無理に腕を伸ばしたり立ったりすることなく、ちょうどいい具合に料理を撮れます。お散歩用レンズとしては割と重要。
別の角度からX-T5の魅力を引き出してくれるレンズが揃った
APS-C機としてはトップクラスの描写性能を持つ最新機種としてのX-T5のポテンシャルを引き出してくれる「XF33mmF1.4 R LM WR」、そして小型軽量な写真機としてのX-T5にマッチする「XF23mmF2 R WR」。それぞれ違った角度からX-T5の魅力を引き出してくれるレンズが揃いました。
これ以上は考えなしに買い足しても無駄でしょうから、今年は(XF18-55mm F2.8-4 R LM OISも含めて)この3本で良い写真を撮っていきますよ。強いて言えば「XF70-300mmF4-5.6 R LM OIS WR」あたりを追加してもいいかもなぁ……動物園とか飛行機とか、望遠をやりたい気分になったら考えますわ。