気付けば4ヶ月ぐらい運転していなかったので、そろそろまた何か乗りに行くかと各種カーシェアアプリをチェックしてみたら、Honda EveryGoにいつの間にか4代目フィットの後期型「RS」グレードが追加されていたのでそれにしました。
例によってごく一部のステーションにだけひっそりと配備、しかも郊外のディーラー併設ステーションなのでめちゃくちゃアクセスが悪いパターン。きっと新型車を配備するときは一般的なカーシェアの使い方というよりは気兼ねなくじっくり乗れる有料試乗車みたいな感じで置いてるんでしょうね。
3代目まで代々用意され人気のあったスポーティーグレードの「RS」ですが、4代目になった2020年のフルモデルチェンジで廃止。柴犬のような親しみやすさ、心地良さをテーマとした4代目フィットの世界観とは相容れなかったのかもしれません。
しかし、そのグレード構成もグリルレスで鼻が突き出たようなフロントフェイスもどうもウケが悪く、ヤリスなどの強力なライバル車相手に苦戦続き。結局、2022年のマイナーチェンジで少し普通の顔つきに戻り、当初のコンセプトからは外れたRSグレードまで呼び戻して再起を図る結果となりました。

(参考)前期 e:HEV HOME
ひとまず外観を眺めてみると、やはり最も印象が大きく変わったのはフロント周り。よく見れば愛嬌のある目つきこそ変わりませんが、上下2段の巨大なグリルに大部分が覆われ、迫力のあるフェイスに。当初の理想も分からんことはないのですが、結局、こと大衆車においては過剰にオラついた顔の車が好まれがちな日本では素直に最初からこうしておきなよ、という話なんじゃないかと。
側面からの写真。全高は1,540mm、全幅は1,695mmでHOMEグレードなどと変わりませんが、SUVテイストのクロスターと同様にフロントバンパーを盛っている分だけ全長が伸びてしまっており、3,995mm→4,080mmとわずかに4mを超えています。
一般的には気にするほどの差ではないと思いますが、入庫条件の厳しい都市部の狭小駐車場を日常的に利用する人やフェリーに乗りたい人(全長で料金が決まって4mが境になることが多い)にとってはちょっと損かも。
後ろから。RSとe:HEVのエンブレムが同居しているのは不思議な感じ……と一瞬思ったものの、前からハイブリッドRSはありましたね。
リアディフューザーがあるというわけではありませんが、それっぽい色分けでなんとなくスポーティーな雰囲気が出ています。マフラーはダミー2本出しとかではないところにささやかな矜持を感じます。
内装もRS専用仕様。そうは言ってもコテコテのスポーツグレードにありがちな赤×黒の派手なものではなく、あくまで他グレードと同様の心地良さを重視したフィット4の世界観を崩さず、落ち着いた雰囲気で好感が持てます。
いいですよね、黄色のステッチ。赤ほど露骨ではないけれど、レーシングカーのステアリングセンターマーカーのイメージなんかもあってほどよくスポーツテイストを感じられる差し色だと思います。
ハンドル周りを見せたついでに書いておくと、パドルもRS専用装備。e:HEVなのでパドルシフトではなく、回生ブレーキの効きを調整する減速セレクターとなっています。
ブログを読み返したらなぜか記事にしていなかったようですが、4代目フィットは前期のe:HEV HOMEとCROSSTAR(ガソリン)を運転したことがあります。
後者は無駄なSUVルックの弊害といえる腰高感・ロール感の残る走りと1.3Lガソリンエンジン+CVTのいかにも昔ながらのコンパクトカーというフィーリングに「こんな見かけ倒しに差額出すならe:HEVの素のやつにしようよ……」とげんなりした記憶しかありませんが、e:HEV HOMEは非常に好印象でした。その時は高速道路にも乗ったのですが、至って普通のコンパクトカーとは思えない静粛性と十分な加速力があり、スムーズな走りで期待以上に快適に移動できました。
さて、後期e:HEV RSの話に戻ると、まずパワートレインに関してはRSだからといって差別化されているわけではありません。ただ、後期型のe:HEVユニット自体がモーターもエンジンもパワーアップしているとのこと。1年ぐらい間が空いているので差を実感することはできませんでしたが、相変わらず良い出来で、コンパクトカーなのに余裕を持った走りをしてくれるなと感心しました。
ドライブモードはNORMAL/ECONに加えてRS専用のSPORTモードが追加されているのですが、これは正直微妙。音だけは騒がしくなる割にパワーの変化はほとんど感じられないので使う意味がないというか……むしろ静かに速いNORMALモードのほうが音とのギャップがある分、軽々といつの間にか加速しているハイブリッド時代のスポーティーグレードらしい爽快感を味わえると思います。
あとはサスペンションがRS専用になっていて、荒れた路面でもうまくいなしてくれて乗り心地は悪くありませんし、コーナーでの背の高い車ゆえの上屋の動きとのズレみたいなものもそこそこ抑え込まれている印象でした。
自動車業界全体でよく使われるワードとしては「RS」なんていうとレーシングだ、スポーツだといった過激なイメージを想起させる響きになりますが、ホンダのRSグレードは「ロード・セーリング」、つまり帆走するヨットのように滑らかに長距離ツーリングを楽しめる車という意味。
「RS復活と言ってもe:HEVメインでガソリン車もCVTだけか」とガッカリした人もそりゃいるんでしょうけど、そもそもホットハッチを作るつもりはないんだというところに立ち返ると、現代でそういう車を作ろうとしたらむしろハイブリッドが自然なのかも。まぁ、どう見てもロード・セーリングは建前でしかなく明らかにそういう層を釣りに行くエクステリアだから、すれ違って揉めるわけですが(苦笑)。
結局、内外装+ちょっぴり足回りが違う程度の内容のエアログレードに近いものなのであれば、前期のModulo Xで良かったんじゃない?と、果たして言うほど“待望のRS復活”なのだろうかという疑問が生まれますが、まぁ値段が全然違いますからね(前期e:HEV Modulo Xは2,866,600円、後期e:HEV RSは2,346,300円)。e:HEV RSはホットハッチではないことさえ正しく理解していれば、この値段の実用車としてはとても良いと思います。