6/15発売!新型ワイヤレスイヤホン「Technics EAH-AZ80」ファーストインプレッション

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6月15日に発売されたTechnics(パナソニック)の新型ワイヤレスイヤホン「EAH-AZ80」を買ってきました。

久しぶりに発売日を楽しみに待って即ゲットした製品なので、せっかくですし使い始めの時点での感想を書き残しておこうと思います。ちゃんとしたレビューは後日書くかもしれませんし、書かないかもしれません(なんたって、どんなに立派なレビュー記事を書いたところでこのブログは1円にもならないですからね)。

ひとまず第一印象での暫定的な評価となりますが、まだ購入を迷っている方の参考になれば幸いです。

待望のTechnics TWS新フラッグシップモデル

Technicsブランドの完全ワイヤレスイヤホン(TWS)は2020年の「EAH-AZ70W」から始まり、翌年に下位モデルとして「EAH-AZ60」と「EAH-AZ40」が追加。今回のAZ80で3年ぶりにフラッグシップモデルが更新され、第2世代に入ったというところでしょう。中級機のアップデート版「EAH-AZ60M2」もAZ80と同時に発売されました。

ちなみに私は元AZ70Wユーザーで、AZ60には手を出さずスルーした人です。AZ60は後発ゆえにLDAC対応など一部でAZ70Wを上回る部分もありましたが、ドライバーなど音質の根幹部分ではやはり一段劣っており「AZ70Wと同水準以上の音で機能面をアップデートした新型」がぜひ欲しいところでした。

音質

音質に関わる部分ではまず、AZ70Wと同様にTWSとしては大きい10mm径のダイナミックドライバーを採用したことが音の良さを予感させます(AZ60は8mm)。有線イヤホンのフラッグシップモデル「EAH-TZ700」にも使われたアルミニウム振動板の採用、それを支えるフリーエッジ構造やドライバー後端のアコースティックコントロールチャンバーなどの音響構造により、きめ細やかで色付けのない原音再現性と広い音場感を追求したという触れ込みです。

箱出しで数時間聴いてみた印象としては、やや人を選ぶ方向性かもしれませんがTWSというジャンルの中で間違いなくハイレベルな音ではあると思います。全体の傾向としてはクールで硬質。細かな音まではっきりと鳴らし切るキレの良さが印象に残る、爽快で整った音とでも言いましょうか。

ハイハットのような高音域の響きにTechnicsらしさを感じる一方、意外と低音も存在感があります。初代のAZ70Wはフラットに近い音作りでしたが、AZ60以降の各機種はメリハリの効いた音になってきていて、そこはAZ80も例外ではないようです。とは言っても、低音域の存在感は「量」ではなく「質」によるもので、ボワボワと締まりなく広がる安っぽい低音とは違います。素で使ってもバランスの破綻を感じるものではありませんが、個人的にはサウンドモード「クリアボイス」を適用した状態のバランスが好みでした。

原音再現に尽くしたという説明とは裏腹に元気な音だと感じる側面もありますが、それは上から下まですべての音の輪郭がはっきりしているがゆえの結果なのでしょう。解像度や表現力を求めすぎず、落ち着いて長時間聴き続けられる適度な音を求めるなら、少し試聴した印象ではEAH-AZ60M2のほうが「聴き疲れしない音」っぽいですね。そこは好みが分かれるポイントかも。

ノイズキャンセリング

AZ70Wを使っていた頃の印象では、アクティブノイズキャンセリングはやはりトップを走るソニーやBOSEと比べれば二流、いや三流かも……という出来でしたが、今作は結構良くなった気がしますよ。

まだ購入した帰りに早速開けてターミナル駅や電車内、近所を歩きながら軽く試した程度ですが、特に人の話し声あたりの音域のノイズキャンセリングがだいぶ強化されています。ただ、外を歩いてみて気付いたのですが、人の声や車の走行音はきれいに消えているのに工事現場の金属系の高い物音は素通しかのように聞こえてきたり、ノイズの音域によって得手不得手がありそうな印象でした。まぁ、一番気になる人の声にターゲットを絞ったということなら、これはこれでありかと。

アクティブノイズキャンセリング特有の圧迫感みたいなものも、WF-1000XM4並みとは言えないまでも前モデル比ではずっとマシになりました(正直、ソニーのノイキャンは強さよりもその自然さが段違いにすごいと思っています)。アプリから100段階でノイズキャンセリングの強さを調節できるのは気が利いていますね。各々の好みにあわせて、強度と圧迫感のバランスに納得できるラインを探ると良さそうです。

機能性

TWSにも色々あって、デジタルガジェット的アプローチで機能性やカスタマイズ性を高めていくメーカーもあれば、アホみたいにデカくて何の機能もなくて音だけは良い(そして高い)という音質特化の異常高級TWSを作ってしまうメーカーもあるわけです(こういうのとか)。AZ80は音質に重きを置いてはいるものの、全振りではなく一通りの機能を揃えるまともさも兼ね備えているので使いやすいです。

ノイズキャンセリングもまともに使えるレベルですし、ケースはワイヤレス充電にも対応。私はワイヤレス充電否定派なのでスマホも含めて普段の充電には基本使わないのですが、イヤホンのケースって充電頻度が低くてあまり存在を意識しないせいか充電を切らしてしまいがちなので、出先で気付いたときにリバースチャージ(バッテリーシェア)機能のあるスマートフォン経由でいつでも回復できるのは助かります。

そして、目玉機能は業界初の「3台マルチポイント」。マルチポイントというのは複数の親機(スマホやPC)と同時に接続しておける機能です。そう聞くと普通のマルチペアリングとあまり変わらない
ような感じで実際使ったことがないとピンと来ないと思うのですが、雑に言えば着信時などに複数のデバイスを行き来する手間が段違いに軽減されます。AZ60では2台まででしたが、AZ80やAZ60M2では3台繋いでおけるようになり、たとえば「仕事用PC+個人PC+スマホ」とか「個人スマホ+仕事スマホ+タブレット」とか、色々なパターンでストレスなく切り替えて使えそうです(ただし、LDACを使いたい場合は2台までです)。

この記事を書くまでの試聴はすべてLDACで行いました。5時間強ぶっ続けで再生できたので電池持ちはほぼスペック通りかと思います。公称値はノイズキャンセリングON+LDAC接続で4.5時間ですが、今回は室内でノイズキャンセリングを切っている時間も長かったのでこんなものでしょう。他のパターンでの公称値はノイズキャンセリングON+AACで7時間、ノイズキャンセリングON+SBCで6.5時間とのこと。ノイズキャンセリングOFFでのデータがないので、そのうち試してみようと思います。

機能面で……というより全体を通して数少ない不満点を挙げておくと、せっかく色々なシーンに合わせて便利に使える設定が揃っているのに、再起動必須の設定項目ばかりなのはちょっとストレス。マルチポイントの接続台数とか(音質重視でLDACを使う場面では1台に戻したい)、音の途切れと映像との遅延のどちらを優先的に抑えるかとか(動画や配信を観るときは気軽に変えたいですよね)、サクッと変えられるともっと良いんですけどね~……他社でも似たような実装なので難しいのかもしれませんが。

余談ですが、家電量販店などに試聴に行くときは事前にTechnicsのアプリをスマホに入れておくことをおすすめします。というのも、アプリで設定しないとLDACは有効にならない(Android OS側の設定だけではダメ)のと、タッチセンサーの操作だけではノイズキャンセリングONと外音取り込みの行き来しかできないので、特に音質面でのポテンシャルを探りたいなら準備していった方が良いです。

装着感

実は音質や機能よりも一番感動したのはココかもしれない。TWSは色々使ってきましたが、こんなにしっかりフィットして安定感・安心感のある機種にはちょっと出会ったことがないです。

「コンチャフィット形状」という耳のくぼみを利用して支えるような新形状がかなり効いていて、まだイヤーピースをろくに吟味していない段階ですら、首を振ろうが口を大きく開けようがびくともしないぐらい安定しています。支点が増えて分散されるおかげか長時間着けてみても痛くなる箇所もありませんでしたし、これはちょっと画期的ですね。

WF-1000XM5(仮)がライバル?最強TWSの一角になりそう

結論、音質“だけ”ではない真っ当なTWSらしい機能性も兼ね備えた高級路線の機種のなかでは、現状トップクラスの機種のひとつだと思います。これまでのTechnicsのTWSは「音はいいけど、それ以外がちょっとね……」という感じでもおすすめしにくい代物でしたが(故障系のトラブルも多かったですし)、今作はいい線行ってるんじゃないでしょうか。

高音質+ノイズキャンセリング、そして3万円台後半という値付けは大ヒット機種「WF-1000XM4」と真正面からぶつかり、あちらも周期的にちょうどモデルチェンジの噂がいろいろ聞こえてきている状況。WF-1000XM5(仮)を待ってみてからどちらにするか決めようと考えている人も多そうです。

ぶっちゃけ私もそうしようかと思っていたのですが、1000Xは毎回、初回入荷分が予約だけで飛ぶように掃けてしまい、しばらく買うに買えない争奪戦になりがちなんですよね(M3もM4も予約していなくて苦労して確保した記憶)。その余波を食らってこっちも結局買えなかった……みたいなことになるぐらいなら、間違いなく良い物だからさっさと買っちゃえ!ということで、今回は比較検討せずAZ80に決めました。在庫状況的には予約なしで普通に買えるところが多そうなので、今のうちにぜひ。

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