シトロエン「E-C4」1DAYモニターの感想

自動車

先日、シトロエンの電気自動車「E-C4」の1DAYオーナー体験……要するに同乗なしの長めの試乗をしてきました。どこのメーカーも、特に力を入れている車種(実際に体験してみないと判断しにくいBEVはなおさら)はこういうの結構やってますよね。

結論から言えば、BEV懐疑派かつSUVというジャンルにもさほど興味がないにも関わらず、思いがけず心を掴まれた非常に良い車でした。

読み飛ばしていい話(皮算用)

私のカーライフの現状としては、トヨタ マークX(130系中期プレミアム)とプジョー208(A9型アリュール)の2台持ち。208に関しては「3ドアハッチバックでMT、でもスポーツグレードじゃなくて、パワーを使い切る楽しさと良い足で決して速くないけど楽しく乗れるベーシックな車」みたいなひねくれた条件を求めた結果として行き着いただけで、フランス車あるいは外車への憧れやこだわりはなかったのですが、これを買ってしまったせいで「フランス車いいよな??」となり、余計な扉が開きかけているところ。

今後2~3年ぐらいの皮算用を語るなら、これからも2台持ちを続けて行くのであれば208は良いおもちゃとして致命的な破壊に至らない限り残しつつ(もう今後こういう車は出てこないでしょうし)、マークXの買い替え先=長距離のおでかけや人を乗せるときなんかの「快適まともカー」枠こそ次はフランス車にしてしまおうや、という想定が頭の片隅にあります。

もう少し絞ると旧PSA(現ステランティス)のクリーンディーゼル「BlueHDi」搭載車がいいかなぁと。プジョーなら先代308(T9型)なんか価格もこなれていて良さげです(現行はなんかデザイン尖りすぎで個人的にはあんまり……)。各ブランドの性格の違いも踏まえると、用途や使い分けを考えると“魔法の絨毯”とも称されるシトロエンにはなお興味を惹かれるところで、具体的には現行C4が気になっています。まだ日本導入から2年ほどしか経っていない新しい型なので現状では予算オーバー気味ですが、フランス車のリセールバリューは低いので先述の通り「2~3年先」という想定で言えばよほどのことがない限り射程圏内でしょう。

「E-C4」を眺めてみる

あーだこーだ書く前に、ひとまず借りてきたE-C4を観察してみましょう。

平たく言えば、最近ありがちなクーペルックの都会派SUVということになるのでしょうが、そもそもシトロエンってカテゴライズしにくい変わった車を作りがちなメーカーですし、よそのクーペSUVを見て抱くような中途半端でネガティブな印象は不思議と抱かないというか、「よくわかんないけどきれいにまとまってるしカッコいいんじゃない?」「シトロエンはシトロエンってジャンルの車だからヨシ!」という気分になります。

現行車種はベルランゴを除けば、C3はコンパクトSUV、C5は王道SUV、C5XはセダンとワゴンとSUVを混ぜたような例によってノンジャンルの不思議なフラッグシップ……という具合に時流に乗ってどれもSUV風味が入ってはいるのですが、その中ではC4/E-C4は生活感のないパーソナルな車というか、あえて言えばC-HRみたいなポジションなのかなーと思います。

シトロエンにしてもプジョーにしてもそうなのですが、国産勢やVWのIDシリーズのような「EV専用車」という扱いではなくて、208なりC4なり、あるひとつの車種のなかで従来ならターボの有無や排気量の違い、ガソリン/ディーゼルなどといった選択肢が存在したのと同じように、BEVを含めた複数のパワートレインから選ばせるようなラインナップ構成になっています。

シトロエン公式サイトにあるC4/E-C4のコンフィギュレーター。ちなみに、プジョーの208/e-208も同じような感じ

少し話が脱線しますが、メーカー公式サイトのコンフィギュレーター(見積もり画面)もそれを象徴するような作りになっているのが興味深いです。各車種のコンフィギュレーターを開くと最初に選ぶのは「グレード」で、その後から「ディーゼルか電気か」のチョイスが来るんですよ。特別な存在ではなく、フラットな選択肢のひとつとして用意しているのだなと日本市場の感覚からすれば異色に映ります。

で、2024年1月現在はC4もE-C4も単一グレード(MAXのみ)での展開なので、試乗車はもちろんE-C4 MAXです。2023年6月の年次改良後のモデルで、車載端末の仕様(主にソフトウェアの部分)がそれ以前とは多少変わっているとか。お値段は554万8500円でディーゼルのC4 MAXより130万円ほど高いわけですが、補助金や減税、維持費の違いを考えると一概にディーゼルより高いとも言えないところでしょう。

そんな「内燃機関か電気かの違いはあっても同じ車」というスタンスはデザインにも現れていて、E-C4の内外装は基本的にはディーゼルのC4とほぼ変わりません。外観の違いはフォグランプの周りなどの枠がなんとなくEVっぽい色になっていたり、フロントフェンダーに「e」のロゴが付いていたりという程度です。

サイズももちろん変わらず、全長4,375mm×全幅1,800mm×全高1,530mmと割と手頃で扱いやすいサイズ。幅や長さで取り回しに困ることもないですし、機械式駐車場OKな全高でもあります。CMP/eCMPというB~Cセグメント車向けのプラットフォームを用いた車種なので、比較的小柄で日本の道路事情でも違和感のないサイズに収まっています。

リアを見たついでに触れておくと、リアウィンドウがかなり寝ている代わりにその下にエクストラウィンドウが付いている、つまりプリウスやCR-Zのような窓配置になっているのですが、それらと比べて全高も2枚の窓の境目も高いせいで、窓枠で後続車のヘッドライトが消える「自動ブラインドアタック」状態が今時の背の高い車相手に起きやすいのはやや気になりました。

先述の通り日本仕様のC4/E-C4はモノグレードでの展開ですが、本国ではもちろんそうではなく、日本に入ってきているのは上位グレードです。そんなわけで立派なガラスルーフ付き。

シートは一見平べったい形状に見えますが、座ってみるとそんな大味な作りでは決してなく、疲れにくい良いシートです。あと、サイドのボタンを押すとランバーサポートの調整ができるほかに、一定周期でうねうね動く「アクティブランバーサポート」という簡易マッサージ機能があって、これがあなどれません。

ちなみに、運転席側のシート調整は上下とリクライニングが電動で、前後のスライドだけ手動。中途半端に見えるかもしれませんが、すべて電動調整の車に乗っていると起動時のメモリー動作の時間が無駄に感じたり休憩のためにガッと一番後ろまでやりたいときに待つのが面倒だったりもするので、この“半電動”の組み合わせは案外アリな気がしました。

また、シートヒーターだけでなくステアリングヒーターも装備されているのも、なるべく冬場のエアコン利用を避けたい(内燃機関と違って暖房が余熱利用ではない)EVにおいては大事なところでしょう。

インパネ周り。素材使いで高級感を出すような意識はあまり感じられないのでそういうのを求める人には価格に見合わないと思われるかもしれませんが、現代的かつ機能的、それでいてフランス車らしい個性もある良いインテリアだと感じました。

変にEVらしさや先進性を演出することに囚われたデザインではなく、あくまでC4の電動グレードなので、良い意味で普通の車なのもいいんですよね。なんでもかんでもタッチパネルにするのがイケてるんだ、みたいな押し付けも当然ないですし、過度にディスプレイだらけでサイバーなインテリアでもありません(とはいえ液晶メーターは小さすぎてちょっと笑えますが)。

内装のお気に入りポイントは、センターの2段になっている小物置きの部分ですね。上段にワイヤレス充電パッドが内蔵されていて、左右のUSB端子の配置などもスタイリッシュかつ使いやすかったです。ちなみに今回は試せていませんが、助手席側にはグローブボックスとは別にタブレット収納用の引き出しがあったり、専用ケースを装着したタブレットを固定できる機能があったりとなかなか気の利いた作りです。

リアシートの座り心地や前後左右の広さは問題ないのですが、やはりルーフがなだらかに下がっているので縦方向はやや狭め。あと、成人男性が座ると背もたれが肩まであるかないかギリギリぐらいなのも気になるところです。B~Cセグメント用プラットフォームを用いたコンパクト寄りのCセグメント車なので、日常的にフルに人を乗せるにはやや手狭そう。

ちなみに、後部座席にもちゃんとエアコン吹出口の下にUSBポートがあって、前と同様にUSB Type-CとUSB Standard-Aの計2口が用意されていました。

車内空間はC4でもE-C4でも基本的に変わらず、唯一、荷室の容量だけはバッテリー搭載の兼ね合いでE-C4が一段劣ります。この試乗の後でディーゼルのC4も見せてもらいましたが荷室の深さがやはり違いました。そもそもクーペルックの兼ね合いで高さが限られているので、4人乗車で週末に買い物に出かける(荷室にしか荷物を積めない)といったシーンを考えると、割と響いてくる違いかと思います。

「E-C4」に乗ってみた感想

今回は全国のシトロエンディーラーで実施されていた「E-C4 ELECTRIC 1DAYオーナー体験」(※記事公開時点では受付終了)を利用してE-C4をじっくり試させてもらったのですが、実はちょっとした車両繰りのトラブルに巻き込まれたおかげで(?)、本来の日帰りではなく1泊2日での体験となりました。

200kmちょっとしか走っていない新車 of 新車な試乗車を受け取り、およそ200kmほど乗り回してきた次第です。おかげで、1DAYで済んでいれば気付かなかったであろう弱点も見えてしまったわけですが……それは後ほど。

まず乗り出して第一に感じたこと、そして最後まで最も強い印象として残ったことは「べらぼうに乗り心地が良い」ということに尽きます。

往年のハイドロニューマチックサスペンションと具体的な機構は違いますが、プログレッシブハイドローリッククッション(PHC)とアドバンストコンフォートシートによる雲の上を行くような快適性は“魔法の絨毯”を受け継ぐものと言って良いでしょう。

ふわふわした浮遊するような乗り心地というと、接地感が乏しく路面のインフォメーションが伝わらず運転していて不安になるようなネガティブなものをイメージされるかもしれませんが、そうじゃないんです。ショーファーカーのような良くも悪くもふわふわした乗り心地という意味ではなく、ドライバビリティも損ねず相反する要素が高度に両立されています。

コーナリングはややゆったりしているかな?ぐらいで自然なものですし、ロングホイールベースによる直進安定性の高さもあり、宙に浮いているようでいてピシッと走る印象。所詮B~Cセグ用のプラットフォームのはずなのに、これまでに乗ったことのある車の中でもトップ3には入る極上の乗り心地に驚かされました。

それを支える要因のひとつとして、イカれたタイヤサイズには目をつぶりましょう。195/60R18だそうです……デカくて細い変なサイズ。ほぼC4/e-C4専用サイズみたいなもんで、軽く調べた限りミシュランしかなさそう。私はミシュラン派なので構いませんが(?)

ちなみに、特殊サイズの兼ね合いで普通のC4も標準装着タイヤが「eプライマシー」なんですよね。EV専用タイヤを標準指定されている内燃機関の車、他にそうそうない気がします。

フランス車の右ハンドル仕様なのにあまりケチが付くところもなく(ペダル周りは全然広くて左側にフットレストまであります)、ADASもややレーンキープが甘いことを除けば(直進中に右折レーンが生えてくると引っ張られたりしがち)普通にそこそこ使えますし、運転操作にストレスを感じる要素は少なかったです。

強いて言えば、EVの航続距離を稼ぐには回生ブレーキの効きが変わるBレンジを積極的に活用していきたいところなのですが、センターコンソールのつまみの隣にある小さくて凹凸も少なく手探りで押しにくい「B」をいちいち押すのはちょっと面倒。パーキングは誤操作防止のために別枠でボタンにするのが妥当として、Bレンジは素直にRNDの並びに入れて同列で行き来させてくれても良かったんじゃないのと思います。

あとこの車、ドア開けると強制的にPに入るんですよね。基本的にはアラウンドビューモニターがしっかりしているのでそれで済む場面が多いでしょうし、無音で切り忘れが起きやすいEVだからそちらのリスク排除を優先するというのは理解できるのですが、薄暗い時間だと目視頼りになりがちなロープ仕切りの駐車場などでは若干うっとうしかったり。

電動モーター特有の立ち上がりの鋭さを前面に出した強烈な加速感はなくて、至ってマイルド。グレード展開や内装の話と同様に、特別でない選択肢として身構えず普通に乗れる感じです。とはいえ出足はまずまずなので、下道中心ならさほど不足は感じません。電費を考えても高速走行はおいしくないので、バランスが取れているかと思います。

E-C4のバッテリー容量は50kWhで、車格的には(価格からしてもサイズからしても)やや多めぐらい。航続距離はカタログ405km(WLTCモード)、乗り方にもよりますが今回試した限りでは実際300kmちょっとは持つだろうという感じでした。

……そう、本来の1DAYなら自分で充電することはなく終わったと思うんですよ。ところが、今回は幸か不幸か1泊2日でそれなりの距離を乗って、自分で出先で急速充電をするところまで行ってしまった。これで実際乗っていくには厳しい一面が見えてしまったのです。

航続距離だけで言えば「これぐらい持てばロングドライブしがちな自分でも乗れるかも」と思えるラインでしたし、急速充電もフィアット500eのようなバカでかいアダプターを持ち歩く必要はなくて、ちゃんと(ちゃんとでもない気がしますが)CHAdeMO仕様にローカライズされています。

詳しくないので突かれても面倒ですし回答しようがないのであれこれ書きませんが、実際あったことだけを書いておくと「2ヶ所の充電スポットでエラーを吐いて充電開始できず、3軒目で成功した」というなかなかヒヤヒヤする出来事がありました(e-Mobility Power→日産系→ENEOSチャージプラスの順)。

ちなみに、最後にENEOSチャージプラスを選んだのは他系列の外車EVオーナーからの助言だったのですが、後々調べてみるとステランティス系のディーラーに設置が進められている充電スポットはENEOSチャージプラスのようなので、こういう相性問題を考えると第一候補にしておくべきだったかも。

インフォテインメントシステムはUIもレスポンスも悪くなく、スマホ感覚で滑らかに操作でき、素性としてはまともな出来です。文字入力、テンキーなんだ!と思ったらフリック入力までできてびっくり。

ただしナビ機能は例外。無駄に一旦バイパスから降ろされて別に時短にもショートカットにもならない謎の迂回をさせられたり、絶対右折できないような大通りの右側に目的地があるのに容赦なく案内を終了されたり、今時スマホのアプリでももうちょっとマシな案内するよってレベルでした。素直にCarPlayやAndroid Autoを使いましょう。

そういう意味では、2023年の年次改良が入る前のモデル(ナビ設定なし・CarPlayやAndroid Autoには対応)を買っても別にいいと思いますよ。結局同じなんで。

結論

最大の魅力である異次元の乗り心地に磨きをかけているという点において、最良のC4はE-C4であるということは疑いようもありません。EVならではの静けさはもちろんのこと、本来なら弱点である車重増さえも独自のサスペンションの特性を引き出すのに一役買っており、車のキャラクターとうまく噛み合った有意義な電動化だと思います。

正直、戸建てにお住まいで普通充電のできる環境があって、たまに遠出をしても片道150kmぐらいまでに収まるというのであれば、C4かE-C4かの二択であれば迷わずE-C4でしょう。コスト面でもトータルで見ればトントンか、E-C4のほうが長い目で見れば少し得なぐらいだと思います。

しかし充電スポットの相性問題という地雷を抱えているのを目の当たりにしてしまうと、さすがに経路充電・目的地充電のみに頼る環境では外車EVの運用は茨の道っぽいな……というのも実感したところ。自分が実際買うならディーゼルのC4かなぁと思います。クリーンディーゼルの減税こそ終わるとはいえ、軽油価格・燃費の両面で依然として経済的な魅力のある選択肢ではありますし、E-C4を返却する際にそちらの試乗車もチェックして、(車外はともかく)車内は騒々しいこともないなというのも確認できましたし。いずれにせよ、良いですよ。C4/E-C4。

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